
大アルカナの5番目を守るのが教皇です。皇帝が世俗の権威を司るのに対し、教皇は精神的・道徳的な権威を司ります。
教皇は「教え導く」ことを象徴するカードです。三重冠を戴き、三重十字の笏を手にし、二人の聖職者にひざまずかれている姿。その佇まいは、モラル(規律)の守護者であり、人々から信頼される精神的指導者そのものです。
この記事では、占い業界歴19年のプロ占い師・五十六謀星もっちぃが、教皇の正位置・逆位置の意味を恋愛・仕事・金運の場面別に詳しく解説します。
教皇の基本情報

- アルカナ: 大アルカナ
- カード番号: 5(V)
- 対応する星座: 牡牛座(Golden Dawn系)
- セフィラ: ゲブラー(Geburah=根源的知性、Case説)
- キーワード: 教導・慈悲・信仰・制度的宗教・秘教の啓示者・結合の原理
カードに描かれた図柄の意味
ライダー・ウェイト版の教皇は、二本の柱の間に座る三重冠の大祭司の姿で描かれます。左手に三重十字の笏を握り、右手は秘教の印を結び、足元にはひざまずく二人の聖職者と、交差した金と銀の鍵。
A.E.ウェイトは教皇について、次のように書いています。
彼は外的宗教の支配者である。女教皇が秘教的で内に引きこもった力の支配的な精であるのに対し、教皇は鍵の力であり、顕教的正統教義であり、その教義に導く生の外側の側面である。
— A.E.ウェイト『タロット図解』(1910年)(筆者訳)
ウェイトは教皇を「制度に属する恩寵の水路」「人類全体の救済の指導者」と呼び、「認められた階層秩序の頭」と位置づけました。個人の救いではなく、共同体全体を導く存在です。
三重冠と三重十字
教皇が戴く三重冠と、手に持つ三重十字の笏は、霊的・精神的・物質的な三界の支配を象徴します。A.E.ティーレンスは「教皇の三重冠と三重十字の笏は、三つの世界における彼の支配を示す。霊的世界、心的世界、そして物理的世界である」と記しました。一つの分野の権威ではなく、生のあらゆる側面に対する指導的立場を示します。
二本の柱と秘教の印
教皇が座る二本の柱は、ヘルメスとソロモンの柱。女教皇(2番)と同じく、対立する二極の間に位置する均衡の原理です。右手で結ぶ秘教の印は、ポール・フォスター・ケースによれば「二つは隠され、三つは顕わされる」ことを意味します。表に出ない奥義と、表に出る教義との両面を司る存在、それが教皇です。
足元の鍵とひざまずく聖職者
足元の交差した金と銀の鍵はペテロの鍵であり、「天国への鍵の力」を象徴します。ひざまずく二人の聖職者は、教皇の教えを受け取る弟子たち。彼らの衣装には魔術師のカードにも見られる百合と薔薇の模様があり、教皇の精神的血統が魔術師から受け継がれていることを示しています。
女教皇との対比で覚える
教皇は、2番の女教皇と対比すると理解が深まります。女教皇が「秘教的・内的」な知恵を秘めているのに対し、教皇は「顕教的・外的」な教えを広めます。同じ「教える」でも、女教皇は一人一人の心に静かに語りかけ、教皇は共同体に向けて明確なメッセージを発します。大アルカナ全体の流れの中で教皇の位置づけを確認したい方はタロットカードの意味一覧も参照してください。
正位置の意味
基本的な解釈
教皇の正位置は「教え導く」ことを意味します。規律(モラル)、信頼関係、慈悲を司るカードです。
このカードが出たときの気持ちは、親身で、自我を抑え、教義(ルール)に則って行動する状態。決して自分勝手に動かず、周囲との調和や伝統的な価値観を尊重します。信頼されるアドバイザーのような落ち着きを持っています。
解決策としては、慣習に従うこと、目上のアドバイスを取り入れること。自分一人で突っ走るのではなく、経験豊かな人物の助言を受けるべき時期です。また、場のルールに従って行動することが、長期的な信頼を生みます。
恋愛での解釈
恋愛において教皇の正位置は、「理想的な少年少女に読んで聞かせるべき恋愛」を示します。精神的に尊敬し合い、結婚を前提とするような真面目な関係。誰からも祝福される、健全で誠実な恋愛です。
相手の気持ちにこのカードが出た場合、あなたを真面目な結婚相手として真剣に考えています。不倫や遊びといっただらしない要素は一切なく、きちんとした手順で関係を進めようとしている状態です。
ヘキサグラム展開法で過去のポジションに教皇が出た場合は、「お二人はこれまで、とても真面目にお付き合いをしてきたのですね」という解釈が有効です。積み重ねてきた誠実な時間が、今の関係の土台になっています。
片思いの相談で教皇が出た場合は、相手があなたを「きちんと向き合うべき相手」と認識している兆しです。軽い気持ちで付き合おうとはせず、時間をかけて信頼関係を築こうとしています。
仕事での解釈
仕事においては、意地悪な上司や暴力を振るうワンマン社長などが一切おらず、みんなが会社のルールに従って清潔で綺麗に仕事をしている、非常にホワイトで穏やかな職場環境を表します。
教育、コンサルティング、士業、公務員、宗教関係、医療関係など、「人を導く」「人を守る」性質の仕事と特に相性が良いカードです。単に利益を追うのではなく、社会に対する責任を果たす仕事ぶりが評価されます。
転職の相談で教皇が出た場合は、大企業や公的機関、安定した組織への就職を示唆することがあります。自分の個性を前面に出すよりも、組織の理念やルールに沿って働くことで成功するカードです。
金運での解釈
金運においては、堅実で誠実な財産形成を示します。コツコツと貯蓄する、ルールに従って節税する、保険や年金といった長期的な備えをするといった、地道な金銭管理が合います。
また、教皇は「慈悲」を含むカードであり、持てる者が持たざる者に分け与える「ノブレス・オブリージュ」の精神と関係があります。寄付や支援を通じて、お金を社会に還元することが精神的な豊かさにつながる時期です。
逆位置の意味
基本的な解釈
教皇の逆位置は「自分の立場を利用する」ことを意味します。気持ちとしては、お節介・偽善・自分が正しいと思い込むこと。謙虚さとフラットな視点を失っている状態です。
逆位置の教皇には、二つの側面があります。一つは「行き過ぎた規律」、もう一つは「規律の欠如」です。偉い人が作ったルールが時代遅れで「今時そんなこと言っている人はいない」とツッコミたくなるような、古臭く頭の固い状況。あるいは逆に、単純にだらしない状況、公にできない秘密の出来事、ずる、横領などの悪事。どちらで解釈するかは、直感と、他のカードとの関連性を重視して判断するのがコツです。
逆位置の解釈全般については逆位置の読み方ガイドも参考にしてください。
恋愛での解釈
恋愛において教皇の逆位置が出た場合、古臭い価値観の押しつけを示すことがあります。「まだ結婚もしていないのに一緒に旅行に行くなんてとんでもない」とお説教をするような、時代錯誤で堅苦しい状況や相手の思考です。
もう一つの側面は、ルールを破る関係性です。不倫、二股、隠し事など、表に出せない関係を警告するカードとして読まれることもあります。特に他のカードに悪魔や月が出ている場合は、後者の解釈に傾きます。
片思いや交際初期で出た場合は、相手があなたを「型にはめよう」としている可能性を示します。「女性らしく」「男性らしく」といった古い枠組みに押し込もうとする態度が見える場合、健全な関係とは言えません。
仕事での解釈
仕事においては、形だけの規律が機能不全を起こしている状態を示します。「前例踏襲」「マニュアル通り」が優先され、本当に必要な判断ができない状況です。
また、権威を笠に着た人物が部下や顧客を困らせている状況を表すこともあります。「上司だから」「先輩だから」というだけで理不尽な要求をしてくるタイプは、逆位置の教皇そのものです。
自分がリーダー的立場にいる場合は、部下に対して説教臭くなっていないか、自分の正しさを押しつけていないかを振り返る必要があります。
金運での解釈
金運においては、見栄のための出費や、形式的な義理に縛られた支出を警告します。冠婚葬祭に多額の費用を使いすぎる、見栄のためにブランド品を買う、といった行動です。
また、教皇の逆位置は「隠れた悪事」も示します。脱税、横領、詐欺といった金銭トラブルの警告として出ることもあるため、周囲のカードと合わせて慎重に読み解いてください。
このカードが示す人物像
教皇が表す人物は、一言で言えば「モラリスト」です。難しく考えず、規律(モラル)を守り、大事にしている存在だと覚えておけば十分です。
具体的には、宗教指導者、聖職者、医師、弁護士、教師、カウンセラー、大企業の管理職、公務員、伝統ある家柄の人物などが該当します。規範意識が強く、誠実で、言葉に責任を持ち、周囲から信頼される落ち着いたタイプです。
A.E.ウェイトは教皇の性質について「秩序と認められた階層の頭」「制度に属する恩寵の水路」と書きました。個人としてのカリスマではなく、制度や組織の代表者としての権威を持つ人物です。
逆位置で出た場合は、偽善者、口うるさい人、古臭い価値観を押しつける人、権威主義者といった、規律が行き過ぎた人物像を表します。あるいは逆に、表向きは清廉潔白を装いながら裏で悪事を働くタイプも、逆位置の教皇で示されます。
このカードが示す状況
教皇が示す状況は、「規律の下で秩序が保たれている場面」です。
正位置の場合、現状はルールや伝統に従って穏やかに運営されています。会社、家庭、地域社会など、互いが互いの役割を理解し、信頼関係の中で動いている状態です。派手な変化はありませんが、その代わり裏切りや混乱もありません。
教皇が結婚を示唆するカードとして使われることもあります。ティーレンスは「『天において契約される結婚』というイエスの言葉の意味における内なる啓示」と述べ、教皇を形式的な結婚以上の深い契約の象徴と位置づけました。
逆位置の場合は、「ルールが形骸化している状況」「規律が窒息の原因になっている状況」「表と裏が違う状況」を示します。いずれの場合も、謙虚さとフラットな視点を取り戻すことが必要です。
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リーディングのアドバイス
他のカードとの組み合わせ例
教皇は、周囲のカードによって「規律」の方向性が決まります。
- 教皇 + 皇帝: 精神的権威と世俗的権威の合一。社会的地位の確立、正式な契約、権威ある立場への就任
- 教皇 + 恋人: 結婚、婚約、祝福された真剣な恋愛。双方の家族も含めて認められる関係
- 教皇 + 吊された男: 自己犠牲を伴う信念の貫徹。長期的な忍耐が必要な状況
- 教皇 + 悪魔: 表向きの清廉と裏の堕落の対比。不倫、偽善、隠れた悪徳の警告
- 教皇 + 塔: 既存の権威や制度が崩壊する危機。価値観の大きな転換
初心者がよくする誤読パターン
教皇に対して最もよくある誤読は、「真面目すぎて退屈なカード」とだけ読んでしまうパターンです。確かに教皇は「ワクワク」のカードではありませんが、相談者が「安定」を求めている場合には最高クラスのカードになります。相談者が何を求めているかを見極めずに評価を決めつけるのは、占い師として未熟な態度です。
もう一つの典型的な誤読は、逆位置を一律に「不倫」と読んでしまうパターンです。逆位置の教皇は「ルールが古すぎる」場合と「ルールが欠けている」場合の両方を含みます。どちらの意味かは、他のカードや相談内容から判断する必要があります。悪魔や月が一緒に出ていれば後者、女教皇や隠者が出ていれば前者寄りに読む、といった視点が役立ちます。
また、「慈悲」というキーワードを単純に「優しさ」と読んでしまうのも浅い解釈です。教皇の慈悲は、古代ローマの「持てる者の義務(ノブレス・オブリージュ)」に由来するもので、「自分は地位もお金もしっかり持っているのだから、持たざる下々の者たちを助けてやらねばならない」という、上から下へ向けられた余裕のある優しさを示します。貧しい者同士が助け合うような、対等な優しさとは性質が異なります。
実践的な読み方のコツ
教皇のリーディングで大切なのは、「相談者がルールを受け入れる側なのか、作る側なのか」を見極めることです。
ルールを受け入れる立場の相談者(若手社員、学生、嫁ぎ先で悩む人など)に教皇が出た場合は、「既存の秩序に従って振る舞うことで評価される」というアドバイスが有効です。一方、ルールを作る立場の相談者(経営者、管理職、指導者など)に教皇が出た場合は、「自分が公正で誠実なルールの体現者であり続けることが、長期的な成功をもたらす」というアドバイスが有効です。
同じカードでも、相談者の立場によって伝えるべきメッセージは変わります。教皇のような「立場の明確なカード」ほど、この見極めが重要になります。リーディング力を磨きたい方はタロットリーディングのコツも合わせてご覧ください。
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参考文献
- A.E. Waite, *The Pictorial Key to the Tarot*, London: William Rider & Son, 1910
- Éliphas Lévi, *Transcendental Magic: Its Doctrine and Ritual* (trans. A.E. Waite), London: George Redway, 1896(原著: *Dogme et Rituel de la Haute Magie*, 1856)
- S.L. MacGregor Mathers, *The Tarot*, London, 1888
- Papus (Gérard Encausse), *The Tarot of the Bohemians*, London: Chapman & Hall, 1892
- P.D. Ouspensky, *The Symbolism of the Tarot*, 1913
- Paul Foster Case, *An Introduction to the Study of the Tarot*, New York, 1920
- A.E. Thierens, *The General Book of the Tarot*, 1928
- Manly P. Hall, *The Secret Teachings of All Ages*, San Francisco: H.S. Crosby, 1928
著者紹介
五十六謀星もっちぃ / 占い業界歴19年。10代で占い師デビュー後、対面鑑定や電話占いで延べ5万人を鑑定。著書『1日2時間で月10万円 はじめよう電話占い師』(同文舘出版)、『五十六謀星もっちぃの占星術講義』(説話社・占い大学公式テキスト)。フジテレビ「ノンストップ!」等に出演。ananweb(マガジンハウス)で星占い記事「もっちぃ占ぃ」を担当。250人以上の占い師を育成。




