
タロットの小アルカナには、「分け合うこと」の意味を鮮やかに描いた1枚があります。それがペンタクルの6です。
ペンタクルの6は「協力関係・ギブアンドテイク・慈善」を象徴するカードです。天秤を持った商人が貧しい人々に硬貨を分け与える図像は、豊かさを独り占めせず、公正に分配するという成熟した精神を表しています。
この記事では、占い業界歴19年のプロ占い師・五十六謀星もっちぃが、ペンタクルの6の正位置・逆位置の意味を恋愛・仕事・金運の場面別に詳しく解説します。
ペンタクルの6の基本情報

- アルカナ: 小アルカナ
- スート: ペンタクル(Pentacles / Coins / Disks)
- カード番号: 6(Six)
- 元素: 地(Earth)。※ A.E. ティーレンスのみ独自説で「火」と解釈
- 別名: Lord of Material Success(物質的成功の主)/Success(成功)
- キーワード: 協力関係・分け合う・ギブアンドテイク・慈善
カードに描かれた図柄の意味
ライダー・ウェイト版のペンタクルの6には、赤いローブをまとった商人が描かれています。片手には天秤、もう一方の手で跪く2人の貧者に硬貨を分け与えています。ペンタクルの5で雪の中をさまよっていた貧者が、このカードでついに救済の手を受け取っている、という連続したストーリーとも読めます。
このカードをデザインしたA.E.ウェイトは、ペンタクルの6を次のように描写しています。
商人姿の人物が天秤で金を量り、困窮し悲嘆する人々に分配する。彼自身の人生の成功と心の善良さの証である。占的意味: 贈り物・贈与・満足、別の説では注意・警戒、今こそ好機、現在の繁栄など。逆位置: 欲望・強欲・嫉妬・羨望・錯覚。
— A.E.ウェイト『タロット図解』(1910年)(筆者訳)
ウェイトは商人を「成功者であり、かつ心の善良な人物」として描きました。単なる慈善ではなく、自らの成功を分かち合う余裕と意志の表れなのです。
天秤が意味するもの
もっちぃ式では、天秤の象徴性を特に強調します。この天秤は「損得の計算」ではなく、相手を選ばずに平等に無私無欲で与える象徴です。誰にどれだけ与えるかを決めるための公正な測定器 — 正義と慈善が同居する道具なのです。
日本の商業倫理「三方よし」や、西洋の「ノブレス・オブリージュ(持てる者の義務)」と同じ発想がここにあります。富める者が富を独占するのではなく、周囲と分かち合うことで共同体全体が豊かになる、という思想です。
古典文献のペンタクルの6像
S.L.M.マザースはペンタクルの6を「贈り物・贈与・満足」と定義し、逆位置には「野心・欲望・情熱・目的・憧れ」を与えました。現代の解釈では、この逆位置の「野心・欲望」が「下心・恩着せがましさ・見返りを求める心」として整理されています。
興味深いのは、パピュスのみがこのカードを「反対の実現、破滅」と極端にネガティブに読んでいる点です(『Le Tarot des Bohémiens』1889年)。少数派の解釈ですが、「成功は一時的・相対的なものである」という警告として読めます。
アレイスター・クロウリーは『The Book of Thoth』(1944年)でこのカードを「Lord of Material Success(物質的成功の主)」と呼び、次のように記しています。
ディスクの6は「成功」と呼ばれ、支配星は月。落ち着きのカードであり、非常に重々しく、想像力を完全に欠きつつも、どこか夢見がちである……「成功」の名に値する。ただし全ての成功は一時的であることを忘れるな — 労働の道の上のなんと短い休止か。
— アレイスター・クロウリー『The Book of Thoth』(1944年)(筆者訳)
クロウリーは「成功」を認めつつ、それが束の間の休止に過ぎないことを繰り返し強調しています。ウェイトの「現在を頼みとしてはならない」という言葉とも通底する警告です。
ティーレンスは結論として「良き・有益な・慈善的行為、書かれた法や命令に規定されていない場でも良く実行される義務。道徳的義務感。慈善・善行。贈り物・贈与・繁栄・実り」と記しました。法律上の義務を超えた自発的な善意がこのカードの核心です。
小アルカナ全体の位置付けについてはタロットカードの意味一覧も参考にしてください。
正位置の意味
基本的な解釈
ペンタクルの6の正位置は「協力関係」を意味します。ギブアンドテイク、親切、支援、共有。お互いにないものを補い合う関係性を示します。
このカードが出たときの気持ちは、見返りを求めない純粋な思いやり。相手を喜ばせることそれ自体が喜びになっている、成熟した感情状態です。
解決策としては、自分から積極的に(他者や状況等における)不足した部分を補うこと。受け身で与えられるのを待つのではなく、自分のほうから手を差し伸べる姿勢が運を開きます。
恋愛での解釈
恋愛においてペンタクルの6の正位置が出た場合、お互いが思いやり合い、相手を喜ばせること自体が幸せ(ゴール)になっている純粋な恋愛を示します。「何をしてもらえるか」ではなく「何をしてあげられるか」を考える関係性です。
新しい出会いの場面では、包容力のあるパートナーとの縁を示します。経済的・精神的に余裕がある相手で、こちらに見返りを強く求めず、自然に支えてくれるタイプです。
片思いの相談で出た場合は、相手があなたに対して親切心を持って接してくれている状態を示します。ただし、それが恋愛感情かどうかはまだ別問題。相手の親切を恋心と勘違いしないよう、状況を冷静に観察してください。
交際中のカップルに出た場合は、お互いに支え合える安定期を示します。片方が疲れれば片方が支え、片方が豊かなら片方に分け与える。ティーレンスが「良き・有益な・慈善的行為」と記した、広い意味での愛の成熟段階です。
仕事での解釈
仕事においては、利己よりも利他の姿勢で成果を上げる時期を示します。「三方よし」の精神、すなわち売り手・買い手・世間の三者すべてを喜ばせる仕事観です。
新しいプロジェクトが始まる場面では、クライアント・同僚・取引先を含めた関係者全員にとってメリットのある取引を示唆します。誰かが損をしない、Win-Winの構造を設計することが成功のカギです。
転職や独立を考えている場合、助けを受け入れる姿勢が重要です。一人で戦うのではなく、師匠・先輩・友人の支援を素直に受け取り、将来的には自分が同じように後進を支援する立場へ回る、という循環を意識してください。
クロウリーはこのカードを「Tiphareth(ティファレト)」の位置に置いています。セフィロトの中心、調和と美の座です。仕事においても、個々の利害を超えた全体の調和が成果を生む局面を示すカードと言えます。
金運での解釈
金運においては、「与えるほど増える」という逆説的な豊かさを示します。寄付、プレゼント、ご馳走、奢り — 気前よくお金を使うことで、結果的に人脈や信頼が返ってくる構造です。
ウェイトは「今こそ好機、現在の繁栄」という意味も与えています。一時的ですが、明らかに金運が良い時期です。ただし「現在を頼みとしてはならない」という追加の警告もあるため、繁栄の時期こそ浪費せず、将来に備える姿勢も忘れないでください。
慈善活動や寄付にも相性の良いカードです。見返りを求めない善行が、巡り巡って予想外の形で戻ってきます。
逆位置の意味
基本的な解釈
ペンタクルの6の逆位置は「一方通行」を意味します。正位置の相互性が崩れ、与える側と受ける側のバランスが歪んだ関係になっています。
気持ちとしては、期待外れ、お節介、ありがた迷惑、恩着せがましい、解雇。下心のある偽善や、お金で愛情を買おうとする態度として現れることがあります。グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」の魔女のように、見かけは優しいが裏に別の目的があるパターンです。
解決策は、見返りを求めないこと。与えたつもりで見返りを期待すると、その期待が満たされないときに怨恨が生まれます。本当に与えたいなら、返ってこないことを前提に与えてください。
恋愛での解釈
恋愛において逆位置が出た場合、見返りを求める愛情、心の狭さ、裏のある親切、といった歪みを示します。「これだけしてあげたのに」「なぜお返ししてくれないの」という不満が、関係を少しずつ壊していきます。
また、金銭や贈り物で愛情を買おうとするパターンも典型です。高価なプレゼントで関心を引こうとするが、本質的な関係構築はできていない状態。あるいは、相手の経済的援助を受け取るばかりで自分から与えることをしない関係です。
片思いの相談で出た場合は、相手の親切を恋心と取り違えている可能性を示します。相手は単なる親切としてしているだけで、恋愛感情ではないかもしれません。
交際中のカップルに出た場合は、どちらか一方が頑張りすぎて疲弊している状態を示します。シーソーのバランスが崩れ、支える側の負担が限界に近づいている兆候です。
仕事での解釈
仕事においては、恩着せがましい上司・クライアントや、片方ばかりが努力を強いられる不公平な関係を示します。「育ててやった」「仕事をあげている」という態度で相手の尊厳を奪うようなパワーゲームです。
また、雇用の場面では解雇を暗示することもあります。業績不振で分配する余裕がなくなり、人を切らざるを得ない局面です。逆に、あなた自身がそうした扱いを受けている可能性も示唆します。
見返りを期待した善意が裏目に出るケースにも注意が必要です。「恩を売っておけば後で助けてもらえる」という打算が透けると、相手は距離を置き始めます。
金運での解釈
金運においては、与えすぎによる自分の困窮、または他者からの援助への依存を示します。気前よく振る舞いすぎて財布が空になる、または人の施しを当てにして自立できないという両極端のどちらかです。
特に注意すべきは、偽の援助話です。甘い言葉で寄ってくる相手が、実は自分の利益のために近づいているだけかもしれません。親切には常に一定の警戒心を残しておいてください。
このカードが示す人物像
ペンタクルの6が表す人物は、見返りを求めない純粋な思いやりを持つ人です。経済的にも精神的にも余裕があり、その余裕を周囲と分かち合うことに喜びを感じています。
単なるお人好しではありません。天秤で公正に分配する知性を持っており、誰にどれだけ与えるかを冷静に判断できます。感情に流された無差別な施しではなく、本当に必要な相手に、必要なだけ与えるプロフェッショナルな善意です。
ティーレンスは「良き・有益な・慈善的行為、書かれた法や命令に規定されていない場でも良く実行される義務」と記しました。つまり、法的に義務付けられていなくても自発的に善を行う人。道徳的な成熟度が高い人物像です。
一方、逆位置で出た場合は、下心のある偽善者を示します。表面上は親切にしているが、裏には別の目的がある。あるいは、与えることで相手を自分に依存させ、支配しようとする。本人も無自覚なことが多く、厄介な人物像です。
このカードが示す状況
ペンタクルの6が示す状況は、「豊かさが分配されている」局面です。
正位置の場合、あなたの周囲では誰かが誰かを支え、余剰が必要なところに流れていく健全な循環が起きています。自分が支える側にいるのか、支えられる側にいるのかは、隣接するカードで判断してください。どちらにしても、関係性そのものが正しく機能している状態です。
ティーレンスは理論欄で「心の願いと望み、投機・創造・恋愛・善行への衝動すべてが活発で鋭敏になる」と記しました。心身ともに活発で、他者に対して惜しみなく自分を開放できる時期です。
逆位置の場合は、「分配のバランスが崩れた状況」または「善意が歪んだ形で機能している状況」を示します。与える側と受け取る側の非対称が固定化し、どちらも不満を募らせ始めます。関係の見直しか、一旦距離を置くことが必要です。
クロウリーは「全ての成功は一時的であることを忘れるな」と警告しました。今の豊かさに甘んじず、次のフェーズに備える視点が重要です。
筆者のLINE公式アカウントでは、占い師の世界や人気占い師になるための方法について、無料動画講座を配信しています。
LINE公式アカウントに登録する
リーディングのアドバイス
他のカードとの組み合わせ例
ペンタクルの6は単体では「分け合う」のカードですが、隣接カードで意味が変わります。
- ペンタクルの6 + ペンタクルの5: 貧者への救済。苦難から抜け出す支援の手
- ペンタクルの6 + 女帝: 母性的な包容力。豊かさを育て分け与える成熟
- ペンタクルの6 + 正義: 公正な分配・法的な和解・裁判の勝訴
- ペンタクルの6 + 恋人: 互いに支え合うパートナーシップの成立
- ペンタクルの6 + 悪魔(逆傾向): 善意を装った支配・搾取の警告
ペンタクルの6と他のスートの6の違い
タロットの「6」は調和のテーマを持ちますが、スートごとに性質が異なります。ワンドの6は勝利と称賛、カップの6は懐かしさと贈与、ソードの6は移行と冷静な判断。ペンタクルの6は物質的リソースの公正な分配です。
他の「6」が内面や関係性の調和を扱うのに対し、ペンタクルの6はお金・物・労働の具体的なやり取りを扱う点で独特です。抽象的な「優しさ」ではなく、具体的な「施し」として現れます。
初心者がよくする誤読パターン
ペンタクルの6で最もよくある誤読は、「ただの吉札」として扱うパターンです。ウェイト自身が「現在を頼みとしてはならない」と警告し、クロウリーも「全ての成功は一時的」と繰り返しています。今が良いからこそ、次の変化に備える視点を持ってリーディングしてください。
もう一つの誤読は、相談者がどちらの側にいるかを特定しないまま「分かち合い」とだけ伝えるパターンです。与える側なのか、受け取る側なのか、あるいは対等な交換なのか。立場によってアドバイスはまったく変わります。
また、逆位置を「ケチ」とだけ読むのも浅すぎます。逆位置の本質は善意の歪み・下心・見返りの期待であり、単純な吝嗇とは別の問題です。「与えているつもりで相手を支配している」「施しているつもりで恩を売っている」という微妙な歪みを読み取る必要があります。逆位置の読み方全般については逆位置の読み方ガイドも参考にしてください。
実践的な読み方のコツ
ペンタクルの6のリーディングで重要なのは、相談者が「誰に何を与えているか/誰から何を受け取っているか」を具体化することです。お金、時間、労力、感情、情報。何がどの方向に流れているかを可視化すると、関係性の健全さが見えてきます。
鑑定の現場では、「見返りを期待せずに一度与えてみてください」「逆に、もらっているものを当たり前と思わずに感謝を伝えてみてください」といった、流れを変える具体的な行動指針を提示するとよく効きます。
また、このカードは「博愛・慈善事業」の吉札でもあります。ボランティア、寄付、支援活動、教育、介護など、利他的な仕事で悩んでいる相談者には強い後押しのカードとして読めます。リーディング力を高めたい方はタロットリーディングのコツも合わせてご覧ください。
タロットを実際に引いてみる
Prophetess Tarotを使えば、ブラウザ上でタロットをすぐに引けます。登録不要・完全無料。いま抱えている問いを思い浮かべながら、ワンオラクル(1枚引き)で1枚引いてみてください。出たカードの解説記事から、今日のあなたへのメッセージを読み解けます。
占い師を目指す方へ。LINE公式アカウントでは、占い師になるための無料動画講座を配信しています。
LINE公式アカウントに登録する
参考文献
- A.E. Waite, *The Pictorial Key to the Tarot*, London: William Rider & Son, 1910
- S.L. MacGregor Mathers, *The Tarot: Its Occult Signification, Use in Fortune-Telling, and Method of Play*, London, 1888
- A.E. Thierens, *The General Book of the Tarot*, 1928
- Papus (Gérard Encausse), *The Tarot of the Bohemians* (trans. A.P. Morton), London: Chapman & Hall, 1892
- Aleister Crowley, *The Book of Thoth*, 1944
著者紹介
五十六謀星もっちぃ / 占い業界歴19年。10代で占い師デビュー後、対面鑑定や電話占いで延べ5万人を鑑定。著書『1日2時間で月10万円 はじめよう電話占い師』(同文舘出版)、『五十六謀星もっちぃの占星術講義』(説話社・占い大学公式テキスト)。フジテレビ「ノンストップ!」等に出演。ananweb(マガジンハウス)で星占い記事「もっちぃ占ぃ」を担当。250人以上の占い師を育成。




