
タロット小アルカナのカップの5は、黒いマントを纏った人物が、倒れた3つのカップを横目で見つめる情景を描いた札です。背後には立ったままの2つのカップがあり、遠くの背景には小川にかかる橋と、その先の邸宅が描かれています。
カップの5が象徴するのは「喪失感」と「残されたもの」。失ったものばかりに目が向き、まだ手元にある可能性に気づけない——そんな哀しみの風景です。
この記事では、占い業界歴19年のプロ占い師・五十六謀星もっちぃが、カップの5の正位置・逆位置の意味を恋愛・仕事・金運の場面別に詳しく解説します。
カップの5の基本情報

- アルカナ: 小アルカナ
- スート: カップ(Cups / 聖杯)
- カード番号: 5(Five)
- 元素: 水
- 占星術対応: 射手座第3デカン+水星(Christian)/火星×蠍座(Crowley: “DISAPPOINTMENT”)
- キーワード: 喪失感・失望・後悔・嘆き・残存するもの
カップは水のスート。5はクロウリー『トートの書』(1944年)で「DISAPPOINTMENT(失望)」と名付けられ、ゲブラー(火の属性)が水のスートに侵入することで「期待された快楽が挫折する」段階と解釈されます。
カードに描かれた図柄の意味
ウェイト版のカップの5には、黒いマントをまとった人物が倒れた3つのカップを横目で見つめる姿が描かれています。背後には立った2つのカップがありますが、人物はそちらに気づいていません。遠くには小川にかかる橋、その先に小さな邸宅が見え、「帰る場所」が暗示されています。
ウェイトはこの札の占い上の意味を次のように記しています。
喪失のカードだが何かは残る。三つは奪われ、二つは残る。相続、家督、伝承のカードだが、期待には添わない。結婚のカードとする解釈もあるが、苦さや挫折なしではない。逆位置:報せ、同盟、親和、血族、祖先、帰還、偽の計画。
— A.E.ウェイト『タロット図解』(1910年)(筆者訳)
「倒れた3つ」と「残された2つ」の関係
もっちぃ講座では、この絵の構図に注目します。倒れた3つのカップはスリー・オブ・カップス(カップの3)の残骸、つまり楽しく過ごした祝祭の時間が過ぎ去ったことを意味します。黒いローブは内面と向き合い、他者の感情を寄せ付けない姿勢。
一方、後ろに立つ2つのカップは「心の中にある楽しみや次への希望」の象徴です。しかし本人はそれに気づいていません。失ったものばかりを見て、残されたものの価値に目が向かない——これが正位置の本質です。
『方丈記』的な孤独
もっちぃ講座はさらに踏み込んで、この人物を『方丈記』の鴨長明のような孤独と重ねます。栄華を極めた過去から離れ、人里離れて一人孤独に過ごす感覚。ただ悲しいだけではなく、過去への諦念と静かな内省が混じり合った情景です。
背景の橋と邸宅は「まだ渡れる橋と、帰るべき家がある」という希望の象徴。完全な絶望ではなく、立ち直る道は残されていることをカードは静かに告げています。
古典文献での占い義
- Mathers(1888年): 「結合、合流、結婚、相続。逆:到来、帰還、報せ、驚き、偽の計画」
- Papus(1889年): 「障害への反撃。闘争の末、障害を克服する勝利」
- Thierens(1928年): 「家族問題、悲しみと喜び、感情、物質的困難。同時に利益と損失があり得る。報せは必ず訪れる」
- Crowley(1944年): 「失望——火星×蠍座。蓮は火の風に花弁を裂かれ、海は乾き停滞した死海。カップは逆五芒星に配置され、精神に対する物質の勝利を象徴」
正位置の意味
基本的な解釈
カップの5の正位置は「喪失感」「気持ちが通わない」を意味します。大切なものを失った後、その痛みを抱えて立ちすくんでいる状態です。
このとき内面で起きているのは、憂鬱、自己憐憫、そして過去を思う気持ち。失ったものばかりに意識が向き、まだ手元にあるものに気づけない——これがカップの5の核心です。
解決策は、嘆いてばかりではなく新しい可能性に目を向けること。背後に立つ2つのカップ、つまり「今あるもの」を思い出す必要があります。部長に嫌われても係長からは尊敬されているかもしれない、去っていった人はいても、残ってくれた人がいるかもしれない——そうした視点の転換が、立ち直りの第一歩です。
恋愛での解釈
恋愛においてカップの5の正位置は、恋人に傷つけられ、コミュニケーションを断とうとしている状況を示します。別れや裏切り、期待外れの言動によって、心を閉ざしている段階です。
失恋相談で出た場合は、まさにその喪失感の真っ只中。相手を忘れられず、前に進めない気持ちを代弁しています。ただし、背後の2つのカップが示すように、まだ完全には終わっていない可能性もあります。修復の道が残されているのか、それとも新しい出会いへの準備期間なのか、周囲のカードと合わせて判断してください。
交際中のカップルには、相手への失望や不満が溜まっている状態を示唆します。期待していた関係性と現実のギャップに、静かに苦しんでいる段階です。話し合いの余地は残されていますが、相手から歩み寄る姿勢が必要になります。
仕事での解釈
仕事においては、気分が乗らず、どんなに頑張っても成果が上がらない理由のある喪失感を示します。プロジェクトの失敗、昇進を逃す、信頼していた同僚の裏切り——具体的な出来事によって意欲を失っている状態です。
ただし、カップの5は「完全な終わり」ではありません。残された2つのカップ=まだ活かせるリソースがあります。失ったものを嘆くより、今ある人脈、スキル、実績に目を向け直す時期です。
金運での解釈
金運においては、予想していた収入を逃した、投資で損を出した、といった失望を示します。ただし、全損ではありません。手元に残っているお金や、まだ回収可能な債権に目を向けることで、立て直しは可能です。
逆位置の意味
基本的な解釈
カップの5の逆位置は「気を取り直す」を意味します。正位置で沈んでいた感情が少しずつ整理され、過去の失敗を糧にして慎重に次へ進もうとする段階です。
このとき内面で起きているのは、失敗を恐れる気持ちと、失敗を糧にして慎重に向き合おうとする意思の両方。まだ完全に立ち直ってはいないものの、黒いマントを脱ぎ始めた状態と言えます。
解決策は、失敗から学び、気持ちを新たに取り組むこと。同じ失敗を繰り返さないための慎重さは大切ですが、過度な警戒心が新しい一歩を妨げないよう注意が必要です。
もう一つの逆位置解釈:過去への囚われ
ただし、もっちぃ講座では逆位置にネガティブな読みも併記しています。それは過去の失敗にこだわって囚われ、抜け出せない状態。正位置で残されていた2つのカップさえも見失い、自ら可能性を閉ざしてしまう——そんな深い沈滞のニュアンスです。
正位置か逆位置か、どちらの逆位置読みを採用するかは、相談者の語り口と他のカードから見極めてください。
恋愛での解釈
恋愛において逆位置が出た場合、失恋からの回復、あるいは関係の再構築への第一歩を示します。傷は癒えていないものの、新しい出会いに対して少しずつ心を開き始める時期です。
ただし、慎重になりすぎて次の恋を逃す危険もあります。「また傷つきたくない」という防衛心が強すぎると、せっかくの縁を自ら遠ざけてしまいます。
仕事での解釈
仕事においては、過去の失敗から学んで再挑戦する時期を示します。慎重さが武器になる場面では有利ですが、過剰な保守的判断は機会損失につながります。
金運での解釈
金運においては、損失から立ち直り、少額から投資や貯蓄を再開する時期。大きなリスクは取らず、堅実な選択が吉です。
このカードが示す人物像
カップの5が表す人物は、過去の痛みを抱え、内省の時期にある人です。表面的には静かに見えるものの、内面では複雑な感情が渦巻いている。他者の慰めの言葉も届きにくく、自分の時間の中で少しずつ傷を癒していくタイプです。
失恋直後の人、大きな挫折を経験した人、信頼していた誰かに裏切られた人——こうした「喪失と向き合っている人物」がカップの5に重なります。
逆位置では、過去から立ち直り始めた人物、あるいは逆に過去に囚われ続けて動けない人物を示します。どちらの状態かは、前後のカードと相談者の言葉から判断してください。
このカードが示す状況
カップの5が示す状況は、「失ったものを抱えながら、残されたものに気づけずにいる時期」です。
正位置の場合、あなたは今、喪失の痛みの真っ只中にいます。失ったものの重みで前が見えず、動けなくなっている状態。しかし、背景の橋と邸宅が示すように、帰る場所も渡れる道もまだ残されています。
逆位置では、少しずつ立ち直り始めた状況、あるいは逆に沈滞が長引いている状況を示します。どちらにしても、過去から何を学び、何を持って前に進むかが問われる時期です。
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リーディングのアドバイス
他のカードとの組み合わせ例
- カップの5 + カップの6: 過去の喪失から懐かしい記憶へ。痛みが温かさに変わる転換
- カップの5 + ソードの3: 深い悲しみと裏切りが重なる。立ち直りに時間がかかる
- カップの5 + 星: 喪失の後の希望。遠くに光が見え始める
- カップの5 + 死神: 完全な終わりと、新しい始まりへの移行
- カップの5 + カップのエース: 失ったものの代わりに、新しい感情が流れ込む予兆
カップの5とカップの4の違い
カップの5(喪失)とカップの4(倦怠)はどちらも元気のない情景ですが、本質は異なります。カップの5は「実際に失ったものを悼んでいる」状態、カップの4は「まだ何も失っていないのに動けない」状態です。
倒れた3つのカップがあるカップの5と、倒れていない3つのカップに背を向けるカップの4。「ない」ことを嘆くカップの5と、「ある」のに気づかないカップの4——この違いを押さえると、同じ「水のスートの沈滞」でも読み分けができます。
初心者がよくする誤読パターン
カップの5の誤読で多いのは、「倒れたカップ」だけを見て「全損」と読んでしまうことです。カードには必ず立ったままの2つのカップが描かれています。ウェイト自身「三つは奪われ、二つは残る」と明言しており、「何かは残っている」ことが札の核心です。
失恋相談で「もう終わりました」と断言するのではなく、「失ったものは大きいが、あなたに残されたものもある」と伝える。これが正しいリーディングです。
もう一つの誤読は、逆位置を単純に「回復」だけで読むこと。過去への執着で動けなくなる逆位置読みも存在するため、相談者の状況を確認してから判断してください。
実践的な読み方のコツ
カップの5が出たときのポイントは、「何が失われ、何が残っているか」を具体的に読み解くことです。
「倒れた3つ」に相当する具体的な喪失は何か——別れた恋人、失った仕事、崩れた信頼関係。そして「立ったままの2つ」に相当する残されたリソースは何か——まだ連絡の取れる友人、持ち続けているスキル、積み上げた実績。この二つを対で読むことで、相談者に具体的な希望を提示できます。
解決策として出た場合は、「今あるものに目を向けること」を伝えてください。これがカップの5のリーディングで最も重要なメッセージです。リーディング力を高めたい方はタロットリーディングのコツも合わせてご覧ください。
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参考文献
- A.E. Waite, *The Pictorial Key to the Tarot*, London: William Rider & Son, 1910
- S.L. MacGregor Mathers, *The Tarot*, London, 1888
- Papus (Gérard Encausse), *The Tarot of the Bohemians* (trans. A.P. Morton), 1892
- A.E. Thierens, *The General Book of the Tarot*, 1928
- Aleister Crowley, *The Book of Thoth*, London: Ordo Templi Orientis, 1944
- Paul Christian, *Histoire de la Magie*, Paris, 1870
著者紹介
五十六謀星もっちぃ / 占い業界歴19年。10代で占い師デビュー後、対面鑑定や電話占いで延べ5万人を鑑定。著書『1日2時間で月10万円 はじめよう電話占い師』(同文舘出版)、『五十六謀星もっちぃの占星術講義』(説話社・占い大学公式テキスト)。フジテレビ「ノンストップ!」等に出演。ananweb(マガジンハウス)で星占い記事「もっちぃ占ぃ」を担当。250人以上の占い師を育成。




