人間の性格に関する理解は、占いの主要テーマであるといえましょう。人間の性格を理解する上で、優しいとか怒りっぽいなどといった具体的な表現のほかに、○○型人間というような分類に分けて理解する方法が多数存在します。今回はそんな分類の一つとして、農耕民族型人間と狩猟採取民族型人間について考えてみたいと思います。
性格区分としての狩猟民族と農耕民族
言うまでもなく、農耕民族とは穀物を育てる農業を中心として食料調達をする民族のことで、狩猟民族とは、魚肉の狩猟および木の実などの採取によってカロリーを確保する民族のことです。これらの食料調達の方法によって、人の性格に違いが出るのではないかというのが、今回のテーマになっている概念です。
和辻哲郎氏が持ち出した概念
農耕民族と狩猟民族の区分によって人の性格に違いが出るという考え方を最初に持ち出したのは、日本の哲学者である和辻哲郎氏であると言われています。ハイデガーの主著『存在と時間』に感銘を受けた彼は、人の性格を時間ではなく空間によって分類することができないかと考え、『風土』という著書の中で比較文化論として農耕民族と狩猟民族の違いを論じました。これには賛否両論がありますが、今日まで語り継がれる概念の誕生であることは確かです。
地域による分類からの脱却
和辻哲郎が生み出した段階では、日本が農耕民族でアメリカが狩猟民族であるとされていました。しかし、実際には日本は漁業が盛んな狩猟民族としての側面がありますし、アメリカ人は放牧と大規模農業によって食料を調達しています。農耕民族と狩猟民族を、地域によってのみ分類することは合理的なこととはいえない側面があるといえましょう。
民族の性質を分類する概念から個人の分類へ
和辻氏のロジックでは、民族ごとの性格の違いという集団を捉えた概念でしたが、次第にそれは個人の性格を理解するための「記号」へと変わっていきます。実際に狩猟によって食料調達をしているかどうかではなく、「狩猟民族のような人」を狩猟民族型人間と表現するようになったのです。動物占いの発案者として知られる心本舗の前田知則氏は、著書『占いを超えた!マジカルフォー実践心理術 (宝島社文庫)』の中で、個人の性格を分類する中心的な軸の一つとして、この狩猟採取民族と農耕民族を取り上げています。
それぞれの特徴
ここで改めて、狩猟民族と農耕民族のそれぞれの性格について検討して解説します。
狩猟民族の特徴
狩猟民族は、動物の肉を得ることができればその日は満腹になり、そうでなければ植え続けるという不安定な生活を送っています。無論、冷蔵庫はないものと考えますので、主要な食糧は保存が聞きません。生活スタイルとしては、少数の部族で暮らしています。ゲルマンやスラブ、アフリカの民族の多くは狩猟民族に分類されます。
一般的には、個人主義の傾向が強く、自分の意見を主張しやすい人柄であるとされています。勢い任せのところがあり、行動力が優れている反面、計画性には乏しい一面があります。また、貯蓄をすることは苦手です。
農耕民族の特徴
農耕民族は、一つの土地に根付いて、大人数で集団生活を送るライフスタイルを手に入れた人々です。その集団はやがて国家となり、法律が生まれて組織の秩序が重んじられるようになりました。こうした民族は河川の流域に都市と文明を作り上げてきました。アジアの国々やエジプト、メソポタミア、そしてスペインなどのヨーロッパの一部の国がこれに該当します。
関連付けられる性格は、計画性と慎重さです。集団の中でルールを守って、画一的に暮らすことが得意であると考えられています。貯蓄をすることも得意で、長期的なスパンで物事を考えることができます。ただし、大胆なイノベーションを起こすことに対しては多くの人が後ろ向きで、農耕民族における革命は少数の天才のみに委ねられる傾向があります。
時代の流れとともに変遷する主役
農耕民族と狩猟民族は、歴史的に対等ではなく、時代ごとに優劣がついていたように思われます。ここでは人類の進歩のなかで、農耕と狩猟がどのように考えられてきたかを振り返り、人間の性格に対しての理解を深めたいと思います。
原始的には狩猟採取が人間の基本
韓非子に、「いにしえは、丈夫耕さざるも、草木の実、食うに足れり」という言葉があります。農耕が中心であった中国において、昔はそんな努力をせずとも、大自然に任せておけば食料は自然に手に入ったのだという嘆きの言葉であると解釈できます。これはなんとなく、今の時代にも通じそうな老人の嘆きという感じがあります。人類は基本的に、狩猟採取を生活の糧としてその歴史に幕を開けたことは、考えるまでもない事実です。
農耕民族が狩猟採取民族を見下した過去
やがて農耕という生産手段を手に入れた人類は、安定した生活を手に入れました。そしてその安定した生活を維持してさらに安定させるために、天文学や農耕機具の研究にいそしみ、集団の力を強めていきました。それによって強大な力を手にした農耕民族の「都会人」は、やがて狩猟民族を見下すようになっていったと考えられています。
戦争は農耕民族が作り出した
狩猟採取民族は生活のために武器の使い方を身につけてはいますが、人を襲うことはありません。その牙はあくまでも動物に向けられるもので、人肉を栄養源にすることはありませんでした。しかし、農耕民族は異なります。干ばつや冷害によって食料が得られない時には、隣人の作物を奪うために平気で人を殺しました。戦争という概念は、農耕と同時に誕生したと考えられています。農耕民族は穏やかで狩猟民族は激しい攻撃性があると考える人がいますが、実は農耕民族のほうが凶暴な性質を持っていると考えるのが正解であるように思います。
そして今、農耕民族はブラック民族に!
歴史的には長きにわたって、農耕民族の安定した生活を送る力こそが、人類の進歩の先として正しいものであると考えられてきました。狩猟民族的な職業である芸術家(随分おかしな表現ではありますが)よりも、農耕的職業である公務員がもてはやされたのはこういうことであると思います。長きにわたって安定した生活のための生産手段を重視ししてきた人類ですが、近年になってようやく、その流れに変化が出ようとしているようです。
マンパワー以外の生産技術が高まるなか、知能を持った人間が行うべき仕事が、再び狩猟採取のような個人の力を使うものに変わり始めているのです。すでに、農耕民族的な組織をブラックであると断じて、若い人たちは嫌悪するようにもなっています。これから先の人類は、「丈夫働かざるもAIの産物、食うに足れり」の時代を迎えようとしているのですから、求められる人物像も変化して当たり前だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。この記事は、電話占いの専門家として長く活動している五十六謀星もっちぃが、上記の参考文献と自分自身の鑑定経験などを踏まえて書きました。もしもご自分の性格や周囲の人の性格について迷いが生じたなら、性格を占う専門家のアドバイスを受けるのも手段です。業界最大級の無料相談を受けることができるシエロさんなどはおすすめです。