血液型性格診断は日本独自の文化
「O型は大雑把」や「A型は丁寧」などといった血液型による性格診断は、広く日本の社会に浸透しています。誰もが少なくとも月に一度はこの種の話題を耳にするといっても過言ではないでしょう。血液型による性格診断が、日本発祥の文化であることはよく知られた話ですが、どのような経緯で浸透したのかを見ていきましょう。
古川竹二氏が創始者
最初に血液型による性格分類を発案したのは、現在のお茶の水女子大学の附属中学校の教師であり心理学者でもあった古川竹二氏です。氏がこの説を発表したのは昭和が幕開けした直後の1927年、金融恐慌の起こった年です。氏の学説を古川学説といいますが、この内容を読んでみたところ、今に残る血液型判断の土台はすでにできあがっていたように思います。
これが最初の血液型性格分類の内容!!
古川学説を要約すると、以下のようになります。
・O型は表面的におとなしく粘着質で、内面には意志が強く少々の刺激には驚かない人が多い。
・A型は内気で遠慮深く、物事を深刻に感じる神経質な人が多い。
・B型はあっさりとして気軽で社交的な人が多いが、執着心がない。
・AB型は、表面的にはB型で内面的にはA型であり、矛盾が多く判断力が鈍いものが多い。
( 『自然科学講義第二編』から要約して引用)
一時は軍事利用も考えられた
古川学説は、学会内では批判的な意見が非常に多かったようで、学際的な場面で認められることはありませんでした。氏の性格分類に対しての例外が多すぎたためです。しかしながら、この新しくて面白い分類方法は、一部の人の心を魅了しました。
特にこの学説に興味を持ったのは日本軍の軍医たちでした。当時の軍人は、輸血のために名札に血液型を記していました。もしも、血液型による性格診断が的確であるなら、人事を考える上で有効なのではないかと考えたのです。しかしこれも、十分に納得いくデータが得られずすぐに研究が打ち切られています。
能見正比古氏が占いにした
正式な学術の場面や軍の研究では十分な成果を上げることができなかった血液型性格分類ですが、能見正比古氏が「血液型人間学」としてこれを市井の人々に知らしめたことで、一大ブームが起こります。現在に血液型性格分類が残っているのは、能見正比古氏とその息子である能見俊賢氏の仕事によるものと考えてよいでしょう。
血液型占いはハラスメント? ブラハラとは
サトウタツヤ氏によるAB型差別の指摘
1970年代以降、マスコミを通じて人々に深く浸透した血液型性格分類ですが、これが差別に該当するのではないかという声が上がり始めました。1994年に心理学者のサトウタツヤ氏(当時福島大学助教授)が、少数派であるAB型に関連付けられる特徴が他の血液型に比べて劣ったものであり、これは差別だと糾弾しました。
ブラッドタイプ・ハラスメント
サトウタツヤ氏は、セクシャルハラスメントに相当するブラッドタイプ・ハラスメントという概念を提唱しました。これは血液型の話をすることによって、ある一定の人がいやな思いをするという事実を世に広めるものでした。
BPOの要請
ブラッドタイプハラスメント、すなわちブラハラの概念は次第に社会の知識人の間で浸透していき、血液型による性格診断は徐々に社会問題としての性質が出てきました。2004年にはついに、放送倫理・番組向上機構(BPO)から「非科学的であり差別につながりかねない」という趣旨の勧告がなされ、以後テレビから血液型による性格診断は消滅ています。
あまり過信せずにほどよく織り交ぜるのが理想
血液型だけでは判断しない方が無難
血液型による性格の判断が「血液型占い」と呼称されることもあるため、占い業界でもこの種の血液型による性格の特徴が話題に上ることは少なからずあります。しかしこれは、真面目に占術の研究をしている占い師にはあまりよい印象を与えないことかもしれません。
純粋な血液型による性格診断はすでに社会的な役割を終えようとしています。お客様に対しての鑑定の主題が、血液型による判断になってしまうようなことは、お客様をがっかりさせる場合もあるようです。占いの現場で血液型による判断をすることは、少し時代後れになっているようです。
自分の占いと組み合わせる
星座などその他の占いの象意と組み合わせることによって、血液型を占いの一部に取り込むことには、まだ可能性があるかもしれません。占いという視点で捉えるなら、血液型は体に表れる特性ですので、相術に当たります。血液型は途中で変化する可能性もありますし、必ずしも生まれ持ったものとは限らないのです。こういったあたりに着目して、占いとしての面白い哲学を組み入れることができると、素敵な占いが誕生するかもしれません。
AB型への配慮を忘れない
少数派であるAB型の血液型を持っている人にとっては、血液型による判断そのものがストレスである可能性もあります。丙午などもそうですが、占いの答えが計らずして差別につながってしまうことはとても残念なことです。鑑定結果を伝えるときに、少数派に対しての配慮を忘れないことも、癒やしの専門家としての占い師には必要な気配りであるといえましょう。