4分で理解する占いの古典『古代の精密科学』(ノイゲバウアー)

 西洋占星術の歴史を学ぶ上で、この書籍を避けて通ることはできないだろうと考えられます。著者のノイゲバウアー氏は、古代の天文学を中心とした科学技術の歴史の研究者です。バビロニアからルネサンスに向けて進化していく天文学と占星術の歴史を鮮やかに描き出した氏の主著が、今回のテーマである『古代の精密科学』です。翻訳者の矢野道雄氏はノイゲバウアー氏を相当に敬愛しているようで、自らの著作の中でノイゲバウアー氏の業績に続いて、中国への占星術の伝播の歴史を明らかにしたいというようなことを書いています。

『古代の精密科学』とは

 ノイゲバウアーの『古代の精密科学』は、古代の文明における「自然科学」の有様をつまびらかにした、科学技術史の本であると捉えるのが一般的かもしれません。ですが占い師としては、占星術の歴史や歴史の中での占星術の意義を知るためのヒントとして、この書籍に当たることになるでしょう。まずは、大筋の内容を見てみたいと思います。

古代の科学技術とは

 占い師ならご存じの通り、古代の科学技術には占いのために作られたものが少なからず含まれます。実際、『古代の精密科学』に登場する科学技術の内容も、当時の占星術を支えるための天文観測の技術がほとんどです。天体の運行を正確に計算で導くには、ケプラーの登場を待たなければなりませんが、紀元前の段階から、かなり数学的な技法を使って、天体の位置や蝕の予測が立てられていたことがノイゲバウアーの研究によって明らかになったのです。

古代の占星術がホロスコープになるまで

 天体観測が起こった当初は、国家の行く末などの大きな出来事が蝕などの天体ショーとして観測されると考えられていました。天体の観測技術が進歩して時代が進むにつれて、次第に天体が表すものが、国家の運命から個人の運勢へと変化し、ホロスコープ占星術が誕生する流れが鮮明に描かれていることもこの書籍の特徴の一つといえましょう。

計算の技術についての詳しい解説

 この本の内容の大部分を占めるのは、古代の天体観測の具体的な技術論です。ジグザグ関数と呼ばれる数学的な手法や、蝕を計算するためのサイクルが、極めてロジカルに解説されています。優秀な理系の人物がこれを読めば、当時のままの方法で天体観測ができるのではないかと思うほどです。私も若い頃は少し格闘したものですが、このブログのためにわかりやすく内容を記述しようと読み返したところ、文系に染まりきった脳髄が読書の中断を強く呼びかけました。このブログの読者が私と同じ状態になり、ブログを読み進めてもらえなくなっては困るので、古代の数学的技法については、原文を読んでご理解ください。下図のようなグラフや式がたくさん登場します。

『古代の精密科学』99項の第5図より引用

占星術師的な目線での本書の見所

 『古代の精密科学』に書かれている内容で、現代の占星術師が読んで面白いと思うところを紹介してみましょう。

黄道12星座が12個である理由

 「13星座占いが合理的だ」という冗談を真に受けてしまった人が現れたため、一時、13星座ブームになったことがあります。さりとて当然ながら占星術は12星座で占うのが合理的であることは間違いありません。1年を定義するために夏至を観測し、その瞬間の太陽の位置と対極にある冬至や、春分点、秋分点を定めて、太陽の通り道である黄道に「住所」をつけるために生み出された概念が12星座です。

 12であるのは、黄道の周りに12個の星があったからではなく、大円360度を30度ずつ、12個に区切った方が計算しやすいからです。紀元前4世紀頃に誕生した黄道12星座の概念は、当時の資料をひもとく限り、何らかの哲学的意味合いによるものではなく、純粋に数学的計算の便利のためだけに生み出されたものであるとノイゲバウアーはいいます。実際、4と3で割り切れる12という数字は、様々な文明で便利な数字として利用されています。これは、黄道の星座が12星座であることの合理性を強く裏付ける証左といえましょう。12星座はそこに星座が12個あったからではなく、明るい星を目印に惑星の位置を特定するために導入されたのです。

占星術の歴史ついて

 ノイゲバウアーは、占星術の原型は、古代の粘土板に刻まれている前兆占いの中にあるといいます。いわゆる、『エヌーマ・アヌ・エンリル』にまとめられている、天体の運行とそれがもたらす結果という組み合わせで構成された古代の予言集が、さらに体系化されて占星術になったというのです。本書では、占星術の起源だけではなく、時間と場所を越えて占星術が伝播していく中での変化を、9世紀の偉大な占星術師であるアブー・マーシャルの著作に現れる特徴を解読するなどして明らかにしています。

まとめ

 占星術の歴史や、人類の歴史の中における占星術の役割を知ることは、即座に占いを的中させる役に立つものではないかもしれません。しかし、こうしたところに知的興味を持って、様々な古代の技術を学ぶうちには、自分自身と非常に相性がよく、現代に通じる新しい占術的着眼点を得ることができる可能性があります。『古代の精密科学』はまさにそのような野趣あふれる占星術の歴史の宝庫であるといえましょう。

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