全く新しい占術をマスターした直後や、既知の占術に関する新しい勉強をした直後には、どういうわけか、その知識を使った占いが面白いように当たることがあります。今回はそんなことについて考えてみたいと思います。
新しい占いはよく当たるのはなぜか
例えば、占星術の本を読んで、「カジミ」に関する知識、すなわち太陽から0度17分のエリアにある天体は太陽の懐でエネルギーを受けて最高の力を発揮するという知識を新たに得たとしましょう。そうすると、そこから近いうちに訪れるお客様のホロスコープにカジミを発見した場合、そのカジミに関連する覚え立ての占いを披露すると、面白いほど的中することがあるのです。もちろん、すべての場面に当てはまるわけではないのですが、占いの勉強に特に力を入れた直後には、占いの精度が急に上昇することは珍しくありません。
仮説1~料理本の通りのカレーとの類似仮説
このような現象が起こる理由として、占術に関する余計な癖がついていないからではないかと考えることができます。咀嚼して占い師になじんだ占いは、その占い師のカラーがついているものです。もちろん、それが悪かろうはずはなく、それこそ占い師が目指すべき境地です。しかし、普段自分のレシピで作っているカレーから離れて、料理本の通りに作ったカレーがイヤにおいしく感じられることがあるでしょう。それと同じように、自分の本来の考えでは導かない盲点となるような話に触れることができるから新しい占いが特に的中するのだと考えることができるでしょう。
仮説2~必要な知識が引き寄せられて学ぶ機会になるから
もう一つの仮説は、学びの段階で、必要なものが選択されているという宇宙の力を信じるタイプの考え方です。近いうちに必要となる知識から順番に学びのチャンスが現れるという与格的な考え方は、以外としっくりくるものがあり個人的には嫌いではありません。
また、これの主格を占い師に置くのではなく、お客様の目線で捉えることもできます。すなわち、自分を占うために重要な知識を学んだばかりでキラキラしている占い師のところに引き寄せられるということです。学びがやってくることに比べて、よりわかりやすい感じもあります。
逆に普段言い古している言葉は摩耗する説
新しい学びがよく当たることを逆サイドから見ると、少し恐ろしい説も潜んでいるように思います。普段からいつも話し続けている占いの内容が当たりにくくなっていくという説です。ただしこれは、占いの知識そのものの進化の話ではありません。あくまでも一人の占い師にとって、昔取った杵柄だけで生き残ることが難しいのではないかということです。
完全ルーティンの占いについて
とある予備校の一時代を築いた、有名な英語講師I先生の授業は、冗談の場所まで含めて完全にルーティンで毎年全く同じだったことが有名です。その内容は精査され、これ以上ないほどに研ぎ澄まされた完璧なものだったといいます。
自分の持っている知識を一方的に伝える占いであるなら、この方式は絶大な力を発揮するかもしれません。手相占いをエンタテインメントとして披露する場合には、各線形の特徴ごとにあらかじめ考えてある説明を組み合わせて占えば、とても完成度の高いトークになるでしょう。悩み相談ではなく、占い師の見立てを一方的に話す占いであれば、細かなルーティンのパーツ、いわばスニペットをたくさん持っておくことには意味がありそうです。
全く同じ相談は二度とない
I先生の方式は、大学志望者に受験英語を教えるという完全に同一の条件で大人数に向けて行うことだからできることです。もしも家庭教師が、生徒のわからないところをくみ取りながら授業をするとしたら、この方式は不可能です。お客様の悩みを聞いて、その質問にたしいて占いをするという現代的な占いスタイルでも同様に、この方式は適応しにくいように思います。
占い師が、あるときとてもうまくいった占いを覚えておいて、それをルーティンで披露してもそこには魂がこもらないでしょう。個別の相談に合わせて、その場で知恵を絞って新しい回答を作り上げることが必要不可欠なのです。そして、その新しい知恵を絞ってその場その場の回答を作り上げるために、新しい占いの知識という着眼点が、よいスパイスとなるわけです。やはり、当たり続ける占い師になるにはたゆまぬ努力が必要なのでしょう。