漠然とした相談内容でも30分は話せる鑑定時間の作り方

 占い師に成り立ての頃には、対面鑑定で30分話すことができるかどうか、強い不安を感じました。お客様の側にお話しなさりたいことがある場合には、30分はあっという間に過ぎるものですが、漠然とした相談のお客様とのお話で30分を占い師の工夫で埋めることは、とても難しいことであると思います。今日のテーマは、漠然とした相談に対してしっかりと中身の詰まった占いをする方法についての考察です。

占い師になるには30分話す力は必須

 対面鑑定のお店の場合、鑑定時間はメニューとして定められています。大抵は20分か30分が基本のコースであると思いますが、この時間を占い師の話だけで埋めるにはどうすればよいでしょう。お客様からの相談内容は「今年の運勢」とか「なんとなく占ってもらいたい」というような、相談というにはあまりにもライトなテーマだったと仮定します。

対面鑑定30分の埋め方

 漠然とした質問に対して、占い師のトークだけで30分を持たせるのは結構至難の業です。さりとて、鑑定時間があらかじめ決められている対面鑑定では、お客様が先に会計を済ませている場合もありますし、どうあってもその時間を埋めなければなりません。鑑定時間の埋め方には、大きくいえば、二通りの方法があります。

命術と相術で時間を稼いで卜術で締める

 一つは、もう仕方がないと腹をくくり、息を止めて占いに関する知識のすべてをひねり出し、命術と相術で20分を埋めて、残りの10分で卜術による総合運の鑑定を行うか、命術や相術で発見した弱点を補う方法をアドバイスするのがよいバランスです。

 ただしこれは、お客様の反応次第では死ぬほどつらいです。「当たっている」とか「すごい!」とかいっていただければ、何時間でもしゃべれるものですが、そうでもなく黙って聞いていらっしゃるタイプのお客様だった場合には、胃の奥が熱くなってくるでしょう。これを乗り越えるための最大のこつは、「黙って聞いているお客様は、あまりにも占いに熱中して反応することを忘れているのだ」と信じることしかありません。しっかり学んだ占術が持つ的中率を信じましょう。

卜術で一か八かの突破口を探す

 もう一つの方法は、漠然とした相談をなさるお客様の心にも、本当は何か悩み事があるのではないかと信じて、先に卜術か命術の現状を読む方法で何らかの問題点を探る方法です。正直、出たとこ勝負の一か八かの方法ですが、これで相談者の悩みを言い当てることができれば、昭和の名占い師、高島象山のごとき「だまって座ればピタリとあたる」を体現することができます。これは、万が一失敗して何も見つけられなかった場合には、命術や相術の話で残り時間を埋めなければいけないという苦しいリスクがあります。

電話占いで30分は難しい課題

 あらかじめ時間が決められている対面鑑定では、なんとかして30分の時間を占い師が埋めることはできるかもしれませんが、電話鑑定の場合はかなり難しいことであるといえます。一分ごとに課金される電話鑑定では、漠然とした相談で30分を過ごそうという気持ちが、こちらにも向こうにも生まれないからです。電話占いでは無理に引き延ばしてはなりません。

 ただし、お話をしたいという願望が中心のお客様と話が弾んだ場合に関しては、相談内容がなくても長話になることはあります。

具体的な話の埋め方

 占い師が一方的に話をしなければならない状況というのは、占い師にとって苦しいものではありますが、時としてそんな状況もあります。そんなときに、一番大切なことは焦らないことです。焦ってしまうと、どうしても早口になりますし、鑑定内容を簡潔に伝えたくなってしまいます。そんなことをしたら、せっかくの話題が短く終わってしまいます。気持ちが不安定になっても、とにかく焦らずに追うように構えることが大切です。

基本的な鑑定時間を理解する

 私が中華街で手相占いをしていたとき、特に悩みを聞かずに、相談者の持っている手相の説明をした場合、毎回決まって7分30秒でした。これはもちろん、運営上の都合を考慮して調節していたのですが、手相占いの場合はそれくらいで十分に伝えることができると思います。

 命術や相術に関しては、相談事がない場合に一方的に出ていることを伝えるなら、大体の所要時間は決まってくるものです。もちろん知識が増えればそれに比例して、何時間でも話すことができる大家もいるでしょうが、なんとなく占いに来た人に対して意味のある話は限られています。その時間を把握しておくことで、いざというときの時間配分の計画ができて大いに役立ちます。

補足情報を占う占術の使い方

 何らかの方位を占うための奇門遁甲や、地理的な相性を占うアストロカートグラフィなど、補足的な情報を伝えることができる占いは、こんな時にとても役に立ちます。相談内容のない漠然とした相談の場合には、ある程度無理矢理そういう話を押し込んでも問題ないでしょう。命術や相術においても、時期予測の手法を利用して補足情報を作ることで時間を稼ぐことができます。結婚や転職の時期を考えることはその王道ですが、漠然と何かいいことがある時期や気をつけるべきことがある時期を伝えるのもよい方法といえます。

相談者の聞きたいことを理解する

 これはどんな占いにおいても基本的なことではありますが、相談者がどんなことを聞きたいと思っているのかには常に気を配る必要があります。最初の段階で、極めて漠然とした質問を投げかけてきた場合であっても、本当は深く知りたいテーマがある場合もあります。

 本当は聞きたいテーマがあるのに漠然とした話をするとすれば、その質問を投げかけるのが恥ずかしいとか、不安だとかいう思いがあるものです。そういった相談者の感情をよく理解して、本当は聞きたいことがあるのではないかという投げかけを忘れずに、楽しい話で鑑定時間を埋め、少しでも相談者が興味を持ったテーマがあればそれを深掘りすることで、本質を探った占いを提供することができるようになります。

五十六謀星もっちぃ

10代の頃から占い一筋に生きる職業占い師。老舗の占い館の史上最年少占い師などを経て、現在は占い師養成講座を主催。延べ5万人を鑑定。占い師の採用試験の実技審査員を400件以上担当。テレビや雑誌などメディア出演多数。著書に『1日2時間で月10万円 はじめよう 電話占い師』(同文舘出版)がある。

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