今日は、『南北相法』に引き続き、占い界の伝説的な古典の名著の内容を、駆け足でわかりやすく説明します。第二回目のテーマは、昭和の大家、中村文聡氏の『手相現象秘録』です。気学における功績が非常に有名な中村先生ですが、私にとっては、手相の奥義に触れたこの書籍こそが、後世に残るべく占い史上の大著であると思っています。今では残念ながらamazonでも取り扱いがないようですが、きっと有名な占い専門書店にいけば手に入るでしょう。とにもかくにも、手相の奥義に通じた占い師になるには、非常に役立つ名著です。
手相の最奥、血色気色の鑑定について書かれた本
今では結構な高値で取引されている稀覯本ですが、ページ数はわずか110程度で、文字は小さく細かいとはいえども決して内容の過密な本とはいえません。それでもこの本にはとてつもない価値があります。それは何と言っても、血色気色について書かれているからです。今日の手相占いの本を見ても、ほとんど触れられることのないこの鑑定方法について、『手相現象秘録』には相当詳しい記述がなされています。
血色気色とは何か
血色とは、手のひらにある赤い色のまだら模様のことです。気色は、他とは明らかに違う力がこもっているような点で、言葉で説明することは困難な気の集まっている部分であると述べられています。気色や血色が現れる部位によって、その運勢を読み取ろうとする占い方は、奥伝ではあれど人相学でしばしば見られます。この本では、それを手相術に応用するための独自の工夫が述べられています。
西洋占星術のハウスシステムと手相
中村氏の血色気色鑑定の最大の特徴は、血色や気色が意味するところを理解するために、手のひらを12の領域に分割することにあります。実は、この12分割の方法は西洋占星術のハウスシステムをモチーフにしています。
占星術のハウスというのは、天体の活動する領域を表しているといえます。例えば「身近な場所」を表す3ハウスに「美や愛情」を表す金星があった場合、身近なものに対して好奇心旺盛な愛情を示すという解釈をします。気色や血色にも、色味や形によってその善し悪しや意味がありますが、それとハウスの示す活動領域を組みあわせることによって、かなり詳細な占いができるようになるわけです。
中村文聡氏の手相学
手相に西洋占星術のハウスシステムを取り入れようとすることからもわかるように、中村文聡氏はかなり進取の気性に富んだ人であり、当時としては珍しいくらいに西洋の占いにも興味を示していました。手相術にしても、名高きキロの手相を愛し、深く研究しています。次は、本書の血色と気色以外の内容について紹介します。
七つの丘
これは今日でも使われる太陽系惑星と手のひらの盛り上がりを関連させた、金星丘など丘の話です。それぞれの丘の詳細な特徴と長所短所、そして丘に現れる星やスクエアなどの線形上の書解釈を紹介しています。今日の手相本のそれよりも幾分詳しい印象があります。
諸線について
諸線とは三大線、すなわち生命線、感情線、頭脳線を除いたほかの線のことです。昨今の手相占いでは、結婚線や人気線、覇王線や結婚しま線などといった線の解釈が非常に普及して一般的になっている感がありますが、中村手相ではこうした諸線の解釈は非常に難しく非熟練者はしばしば判断を誤るとしています。
手相と病占
まず、中村氏は手相をアルカリ性の手相と酸性の手相に分類する方法を提唱しています。正直、このアルカリ性の手相と酸性の手相というのが、具体的にどういう意味合いで名付けられたいかような意味を持つものなのかは、この本だけでは判然としません。ただ、その見分け方自体は実例を挙げて十分に記されています。
数々の手相の病占について、実例を挙げて解説がなされています。とても興味深く面白い例もありますが、今日では少し使いにくいかもしれません。
世界の手相家キロ氏紹介
中村文聡氏を始め、『両手を基礎とせる手相の見方』の三輪祐嗣氏など、手相の大家がこぞって紹介するイギリスの超有名手相家キロの若き日を小説風にまとめた文章が載っています。若き日のキロが、かの女スパイ、マタ・ハリと出会い、手相から彼女の手相からその運命を予感する甘酸っぱい占いロマンスです。
まとめ
控えめに言っても、手相を中心とした占いをするならこの本は必読です。実際私も中華街での手相修業時代には相当にこの本を参考にしました。血色と気色の鑑定によって、いくつかの大的中をしたこともありますし、幾度かの手痛い外れも経験しました。当たり外れは占い師の常です。最高の大当たりを目指して腕を振り回す占いがしたいなら、このような本は非常に役に立つでしょう。
以前に書いた『南北相法』はこちらからご覧ください。