鳥占について メソポタミアから現代まで

 鳥を使った占いは世界各地で行われてきました。今日は、鳥と占いの関わりについて紹介したいと思います。

日本の鳥占

 鳥占という言葉を聞いたことがあるでしょうか。トリウラと読みますが、これは文字通り鳥を使った占いの総称です。広辞苑の鳥占の項目は以下のようになっています。

年占(としうら)の一種。年の始めに山に入って小鳥の腹を裂き、穀物があれば吉、なければ凶とし、その年の豊凶を占ったという。また、鳥の止まる樹の枝の南北や飛ぶ方向、鳴き方によっても吉凶を占った。

『広辞苑』

 現在ではこのような方法で鳥を使った占いをすることは考えにくいことです。現代の日本のプロの占い師が、仕事として鳥を使った占いをする例は、ほとんどありません。少なくとも私は鳥の胃を暴いて占いをすることはありませんのでご安心ください。

 この占いがいつから行われていたのかは定かではありませんが、特に後段の鳥の動きを元にした占いは、世界にも類例があり、かなり昔から行われていたことが推察されます。

メソポタミアの鳥占い

粘土板の占い文書

 古代メソポタミアといえば、楔形文字で記録された粘土板が大変に有名です。実はその粘土板に刻まれている内容の大部分は、占いに関する文章でした。メソポタミアの人々は占いが大好きだったようで、かなり体系化された占いの方法論が存在していたようです。その文章には文法的な決まりがありました。

構文は「予兆」を説明する「前提節」(仮定法)と、それに続く「帰結節」(前定説の返答が与えられる)とから成り立つ。

Jean Bottero( 2013/8 )『最古の宗教 古代メソポタミア』法政大学出版局

 これはわかりやすく丸い言葉にすると、「こういうことがあったら、こうなりますよ」という形式で、様々な前兆と出来事が結びつけられているということです。


最古の宗教 〈新装版〉: 古代メソポタミア

粘土版に記された鳥占い

 鳥の行動を「所与」として、人々の身に起こる「帰結」を記した占いがたくさん出土されています。最も古いものはイシンラルサ時代のものだそうで、それは紀元前2000年くらいのものであると考えられますので、今から4000年も前の占いということになります。

 この鳥占いは無数に存在し、例えばこんな下記のようなものが知られています。

もし、鷹が・・・・・・人の左から右に飛んでいくならば、
その人は(裁判での)論敵に勝利し、敵なしであろう。
もし、鷹が・・・・・・人の右から左に飛んでいくならば、
その人は長い間、監禁されるであろう。

月本昭男(2010/2)『古代メソポタミアの神話と儀礼』岩波書店

 この例のように、鳥の種類と飛んでいく方向から占うものもあれば、鳥が餌を横取りされたら人間もそうなるであろうというように、鳥の行動と人間の行動を結びつけるものもあります。また、鳥が急降下すれば家が没落するというような、「観念連合」と呼ばれるような形式のものもあります。このあたりは、先の引用元である、 月本昭男(2010/2)『古代メソポタミアの神話と儀礼』岩波書店 に非常に詳しく記されています。


古代メソポタミアの神話と儀礼

古代ローマの鳥占い

 古代ローマでは、鳥による占いがとても重視されました。リーウィウスの 『ローマ建国史』 によれば、ローマ建国の時に、都の中心をどこに置くかを鳥による占いで決めたそうです。

 以来、古代ローマの文化において、鳥占いは国家の重要ごとを決定するための儀式として定着しました。アウグルと呼ばれる占い専門の役人が任命されていたことは有名です。アウグルは鳥の飛び方や数、餌の食いつきなどと行ったことから、国事の吉凶を予測しました。アウグルの仕事のほとんどは鳥による占いですので、鳥卜官と日本語訳されています。

現代の鳥占い

 現代で有名な鳥を使った占いといえば、台湾の文鳥占いです。これは、よく訓練された文鳥が人間の質問に答えるべく、カードを選ぶという占いです。肉食をせずに穀物だけで育った文鳥には霊力が宿ると考えられているそうで、文鳥占いはそんな鳥の霊力によって未来を占うものなのです。

 台湾で有名な文鳥占いですが、日本でも何カ所か文鳥占いを体験できる場所があるようです。

五十六謀星もっちぃ

10代の頃から占い一筋に生きる職業占い師。老舗の占い館の史上最年少占い師などを経て、現在は占い師養成講座を主催。延べ5万人を鑑定。占い師の採用試験の実技審査員を400件以上担当。テレビや雑誌などメディア出演多数。著書に『1日2時間で月10万円 はじめよう 電話占い師』(同文舘出版)がある。

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