占いが伝える話の内容は、時として感覚的で、簡潔な言葉で説明するのは難しいこともあるでしょう。占いが紡ぐストーリーをシンプルな単語に変換してしまっては、かえって適切ではないことがあります。そんなときには、その気持ちや状況をもっと物語的にわかりやすく例える工夫をするとよいでしょう。今回は占いにおけるたとえ話の使い方について考えてみたいと思います。
たとえ話は非常に効果的な表現技法
占いの話に限らず、たとえ話は大変に効果的な表現の技法であるといえます。まずはたとえ話の有効性と活用の仕方についての基本を確認しましょう。
人は「わかる話」しか聞こえない
極めて単純な話ですが、人はわからない話はいくら説明されてもわかりません。一般相対性理論に対する反証を説明されたとしても、そもそも特殊相対性理論からして理解していない人には通じるはずがないことです。
占いが示している結果のうちで、最も抽象的でわかりにくい部分についても同様のことがいえます。理論的にはわかることであっても、それが心にぴったりはまるものでなければ、その話を信じないというのはよくあることです。伝え方の工夫によってそれを乗り越えることができるなら、たとえ話は占いをより信頼しやすいものに変えるツールとしても機能することになります。
たとえ話の原則は相手が知っているものに例えること
会話を非常にわかりやすくしてくれる便利なたとえ話ですが、気をつけなければならないことがあります。それは相手の知っていることにたとえなければ意味がないということです。「何でも野球に例えるのはおっさんの証拠」と言われますが、実際、野球を使ったたとえが「外角高めを力強く流し打ちするような」技巧的なものであったとしても、それは女性には通じにくいものである可能性が高いのです。たとえ話はわかりやすくするために用いるものなのですから、相手にとって最もわかりやすいシチュエーションや例を選ぶことを意識しなければなりません。
占いに使うことができる例示の類型
たとえ話は会話の技法として非常に有力なものですが、抽象的な内容を具体的に伝える際には、例示が特に有効に作用します。まずは占いに使いやすいたとえ話の型を紹介します。
感情を具体例で示す
人間の感情に関する説明は、抽象度が高く客観的指標にかけるため、例示を用いて説明するのに特に向いているテーマの一つであるといえましょう。占いにおいては、その感情を伝えることがメインのテーマになることも多いので、それを言葉巧みに詳しく説明することができるかどうかは、力量のある占い師になるには欠かせないテーマです。
感情を示すたとえ話としては、簡単なシチュエーションを想定して、その感情の切実なる内情を示すのが最も伝わりやすいでしょう。例として、恋人に振られた男性の気持ちを表現する言葉として、「閉店時間を迎えた大きなデパートの8階に一人で取り残された子供のような寂しさをと焦りを感じている」などとしてみると、なんとなく具体的なイメージが喚起されやすいものと思います。
立場や状況を変えて表現してみる
相手の感情や考え方が、どうしても納得いかないものである場合、人はそれをすんなりと理解することができないというのは先述したとおりです。そこで、占いの結果として相談者が納得できないような結果が出てきた場合に、それを丸め直してわかりやすい話に変換するという手法はしばしば有用です。
恋人の男性が他の女性に目移りしているように見える感情の説明をするのに、「恋人が大切だから実際に浮気をする気はないけれどスケベな目で見ています」と説明しても、それは多くの女性にはしっくりこない話であるように思います。しかしそれを「ダイエット中だと自覚しているので絶対に食べませんが、チョコレートのパッケージを眺めてしまう心境です」と表現すると、少しは伝わりやすくなることもあるでしょう。
状況を既存の物語にたとえる
一つの感情の表現ではなく、鑑定結果全体の大枠をたとえ話で示すことも有力です。その代表的な技法は、既存の物語に照らして例えることです。例えば親の反対に抗うことができずに葛藤している恋人の気持ちを、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』になぞらえて説明する方法です。これはずいぶん気取った例ではありますが、有名な物語の主人公に大枠を仮託して、細かな違いの部分を説明すると非常にわかりやすい話になります。「ロミオのように家族の反対に対して行き場のない苦しみを感じながらも、最後に心中をしたいというほどの気持ちではないからこの彼の愛情には不足があります」などと表現すると、なんとなく説得力が出るかもしれません。