1990年代に、アダルトチルドレンという言葉が非常に流行したそうです。私自身、世代的にあまり記憶にとどめておりませんが、これから先の方にはますます耳なじみの薄い言葉になるのではないかと思います。そして、単純に、概念自体が急速に膨らんで急速にしぼんだため、言葉を知ってはいるけれど確かな意味をご存じない方も大勢いらっしゃると思います。今回はそんな、アダルトチルドレンという概念について、おさらいしつつ考えてみたいと思います。
アダルトチルドレンとは何か
アダルトチルドレンという言葉は、シンプルに言えば、親から負の影響を受けた子供たちという意味です。元々の意味としては、親のどちらかがアルコール依存症であるために、家庭環境が困ったことになっている子供を指しているそうです。「大人になりきれない大人」という意味であると誤解されることがありますが、これは間違いです。
診断を要する病気としての概念ではない
アダルトチルドレンという概念は、うつ病やASDのような「病気」の一種ではありません。医師が診断を下してアダルトチルドレンという病名がつくわけではなく、自分自身がアダルトチルドレンであると自認すれば、その人はアダルトチルドレンということになります。この言葉は、アルコール依存患者を支える自助グループを支える援助者が、1970年代に生み出したものとされています。その後、1990年代にメディアによって盛んに取り上げられて急速に普及しました。
ACが持っている「免責性」
心理学者の信田さよ子氏は、アダルトチルドレンには定義などを考えるべきではなく、そうだと思う人はみなアダルトチルドレンだと書いています。そして、アダルトチルドレンには「あなたが悪いわけではない」という免罪符としての効果があることを指摘しています。自分自身を含めて、誰かに責任を押しつけて苦しむよりも、自分がアダルトチルドレンであるということを受け入れることで楽になるなら、それでいいじゃないかというのです。これは、ある意味では今日の発達障害という概念の拡大に近いものがあるのではないかと思います。
概念定着からの揺り戻し~そして新しい概念へ
急速に定着したアダルトチルドレンという言葉ですが、今日ではほとんど耳にする機会はありません。私が占い業界にデビューしたのは2007年ですが、占いの世界にいてもなお、最初の3年間はアダルトチルドレンという単語を耳にしませんでした。私の勉強不足もあるかと思いますが、口語表現の中でアダルトチルドレンという単語を耳にする機会は、数年に一度といったところです。ではアダルトチルドレンはどこに行ってしまったのでしょう。
毒親の登場
アダルトチルドレンという言葉が定着すると、今度はそういう境遇にある子供たちではなく、問題を抱えた親の方に注目が向けられるようになりました。アルコール依存のような深刻な問題を抱えた家庭の問題ではなく、もっとシンプルで小さな問題を抱える親もその対象に含まれます。激しい暴力だけではなく、言葉や態度などで子供を思うがままに支配しようとする親を、「毒親」と呼称します。結局は親子関係からの解放が重要なテーマであるという点からすれば、アダルトチルドレンの議論とほとんど変わりありません。
母娘関係への着目
また、親子の関係は、特に「母親と娘」の関係に注目が寄せられる傾向にあります。これは、嫁と義母の関係のことではありません。実の母親と娘の関係の問題です。また、母親が毒親であるというばかりではなく、単純に母と娘という親子関係が窮屈になっているという指摘もあります。言葉の端々に違和感を感じ合ってしまうなど、女性ならではの感性から来るトラブルも見られます。
まとめ
親子関係が子供に与える影響は、言うまでもなく絶大なものです。それにどのような名前をつけるかとおいう問題はさておき、占い師になるには、親子関係の問題についての一般的なり会を持っていることはとても大切だと思います。