占いの相談の中には、しばしば彼の子供を妊娠したが、結婚してくれるわけではない。しかし生むことにするという相談があります。こうした場合に占い師は「彼が認知してくれますか」という相談を受けることになるわけです。その相談に的確に答えるための前提知識として、日本のルールにおける「認知」というシステムを今一度おさらいしてみましょう。的確な知識を持つことは、的確な答えを出す占い師になるにはとても役立つことです。
認知とはなにか
そもそも認知とは、生まれた子供が自分の子であることを男性が認める手続きのことをいいます。結婚してから200日以上たって生まれた子供や、離婚後300日以内に出生する子供は自動的に父親が決まりますので、この手続きは必要ありません。婚外に生まれる子供を「非嫡出子」といいますが、認知とはこの非嫡出子の父親を定めるためのシステムであると理解してよいでしょう。
認知の基本的なやり方
認知の最も基本的な方法は、認知届を市町村役所の窓口に提出することです。認知届には婚姻届や離婚届のように、決まったフォーマットがありますので、その用紙に必要事項を記入して提出すれば、認知が認められます。認知届を提出する場合は、父親が認めているならば証拠を提出する必要などはありません。ただし、対象となる子供がまだ胎児である場合には、母親の承諾が必要です。また、子供がすでに成人している場合には、子供本人の承諾が必要になります。
子供にとっての認知のメリットデメリット
認知を受けることによる子供、もしくは母親側のメリットはいくつかあります。経済的な目線でいえば、養育費を請求する権利が発生することが一番大きいでしょう。また、父親が万一亡くなった場合には、遺産を相続することができる権利も発生します。逆にもしも、父親に対する介護が必要になった場合や、父親を扶養する必要が生じた場合にはデメリットとなります。
占い師という目線で捉えるならば、認知してもらうことによって、子供のことを真剣に考えていこうとする気持ちが父親にあることを確認できるという点が重要です。結婚はしないまでも、子供をないがしろにせずに責任をとろうとするせめてもの誠意として、認知届による認知は効果を持ちます。
父親にとっての認知のメリットデメリット
父親にとって認知をすることは、経済的にはデメリットが多いといわざるを得ません。もちろん、血を分けた実の子供にお金を使うことをデメリットと考えるかどうかは当人次第ですが、責任が生じるという意味では手放しで喜べないでしょうし、子供のためなら何でもするという男性なら、母親とちゃんと結婚するはずです。
父親にとってもメリットはあります。一つは、子供のデメリットの裏返しとして、万が一の場合に自分に対する扶養の義務を持った直系血族を持つことができるというメリットです。そして、これは実例はないかもしれませんが、最悪のタイミングで認知を求められるという「不発弾」を抱え込む心理的リスクから解放されるということです。認知届には期限がありません。それ故に、認知をしなかった場合、女性側がその気になれば、男性がほかの女性と結婚した直後に認知を求めてくるようなこともあり得るわけです。そうしたリスクを軽減する意味でも、先に誠意を示しておくことには意味があるかもしれません。
なかなか認知してもらえないときは
男性側にとっても認知のメリットは多少はありますし、何より今の時代、自分の子供であることが事実なら、DNAによってすぐに明らかになるわけですから、逃げていても意味はありません。しかしながら希に、特に既婚男性などにおいては、認知をすることをかたくなに拒否する場合があります。そんなときの対処法を見てみましょう。
調停による認知
認知届を提出する円満な認知を「任意認知」というのに対して、法的手段によって認知を求める方法を「強制認知」といいます。具体的には家庭裁判所に調停を申し立てて、男性に認知を促します。定型文の申立書を提出し、必要に応じて証拠の提出を求められることもあります。期間は大体半年から8ヶ月くらいかかります。離婚調停などと違い、途中で当事者同士が合意に至ったとしても必ず家庭裁判所による審判を受けなければならないという特徴があります。
調停による認知は、なかなか珍しいパターンであるといえます。例えば、2015年に出生した非嫡出子は2万3千人ですが、裁判所に申し立てがあった認知調停の件数は247件にすぎません。夫以外の男性の子供を妊娠した女性のうちで、調停まで申し立てる人がいかに少ないかがわかります。認知調停は毎年250件前後の件数で推移しています。
裁判による認知
調停が不調に終わった場合、次に待ち受けるのは裁判による認知です。今度は正式な裁判ですので、女性側は被告が子供の父親である証拠を提出する必要があります。DNA検査をすれば100%決まる裁判ですので、訴因が確かなら男性に勝ち目はありません。男性がDNA検査に協力しなかった場合は、付き合っていた証拠などで頑張るしかありませんが、検査に協力しないことそのものが、男性に不利な事情として裁判に影響するそうです。
認知のアレコレ
DNAという証拠がある以上、裁判までいけば男性に勝ち目がないという問題の性質上、認知を拒む男性は比較的少ないようです。ただし、出産そのものに賛同しない場合や、もしくは男性が既婚者であった場合などには大変な修羅場になります。
既婚男性の場合の認知
男性が既婚者だった場合は、奥さんも巻き込んだ大変な騒動になることは避けがたいものです。大概の場合は、ことの重大さ故に観念して奥さんに伝えることになりますが、その場合は妊娠した女性も奥さんから慰謝料請求をされる可能性もあり、大変に複雑です。
認知した事実は男性の戸籍に残る
既婚者の男性が奥さんに隠れて認知をすることができればよいのですが、認知した事実を隠しきるのは難しいことでえす。男性の戸籍に、どうしても消すことができない認知の記録が残るからです。この記載事項は、男性がほかの女性との間に子供をなしたときに目につきます。また、パスポートの申請で見つかることもあるでしょう。
よしんば、ずっと戸籍を隠し通したとしても、その男性が死亡した際には必ずばれることになります。不倫相手と子供をなして認知してしまったなら、その秘密は墓場まで持っていってもダメなのです。
まとめ
占いの現場において、認知を求めるという話自体はしばしば発生する相談であると思います。しかし、認知を素直に受けることができなかった場合のことは、以外と知られていません。今の時代、当人たちはネットで情報を調べてきますから、認知の方法についてはよく知っています。
占いの着眼点としては、男性が認めるかどうかを見極めることにつきます。認知の裁判が男性にとって大変なものであることを踏まえて、負け戦に違いないものを頑張ろうとするのかどうか、それを性格から見定めることが大切です。