最近というほどに直近の流れではないのかもしれませんが、占い師が伝える言葉の表現は丸くなってきているという印象を受けます。恐ろしい予言や厳しい説教をする辛口の占いよりも、優しく人のよい部分を見つける占いが多くなっているのではないかという気がしています。今日はそのあたりについて考察してみたいと思います。
占い師がお客様を否定しない時代
カウンセリング要素を取り入れた占いで、占いによる癒やしを追求するという概念がすっかり定着した昨今にあって、占い師が強い言葉を使わなくなる自然な流れなのかもしれません。伝統的な占いを古式に則って学ぶと、厳しい答えを出したくなってしまうものですが、そのあたりの調整も今の占い師にとっては必要なことなのかもしれません。
占いの入門書における表現の今昔
出版年数の古い占いの本を読むと、その表現の厳しさに驚くことがあります。例えば、1987年に発行された大和田斉眼氏の名著『すぐに役立つ手相の見方』には、「極端に指が短い人」に関して、以下のような記述がなされています。
こういう指のものは、原始的な本能だけで、心がいっぱいになっているために大勢の間に入って社会生活をすることは、望めないものです。いわば無能力者であって、人の厄介者になるか、または、社会の最下層できたない生活をして、一生終わってしまうことになるのです。
『すぐに役立つ手相の見方』大和田斉眼 P36
指の短い人に恨みでもあるのでしょうか。同一シリーズの人相の本もそうですが、この本には悪口に近い鑑定結果がみっちり書かれています。ここにはかけないような差別用語同然の言葉もバンバン出てきます。著者の癖もあるかもしれませんが、少し古い本には、このような厳しい鑑定結果がかなり多く見られます。
また作家の新章文子氏が1971年に書いた『四柱推命入門―生年月日が証すあなたの運命 (プレイブックス 104)』では、星の組み合わせによる運命の実例としてたくさんの有名人が出てくるのですが、津川雅彦が女性問題で週刊誌を賑わせたとか、小川選手が球界を追放されたとか、かなりネガティブな実例があげられています。果ては人殺しの例まで挙げています。こういった記述は、今の占いの本ではあまり見かけられません。
最近、当ブログでも紹介させていただいた『ざんねんな手相 誰にでもあるけど変えられます!』では、タイトルに「ざんねんな手相」とあるにもかかわらず、大和田本のような厳しい表現は見られません。近年の占いの本は、かなりまろやかに人のよい部分を褒めることが主流になっているのではないかと思われます。
「アゲ鑑定」の効用
占いの現場では、「アゲ鑑定」という概念が取り沙汰されることがあります。これは、気分をあげることを中心にした鑑定をさすことばです。占いの答えとして示されているものよりも少しよく言ってしまうこともそうですし、言葉の表現を工夫してよく聞こえるようにいうこともあります。
こうしたアゲ鑑定は、お客様からの評判が高くなりやすく、お客様にとっても占い師にとってもモチベーションを高めるポジティブな効果があると考えられています。もちろん、占いの答えを曲げてしまうのはよくないでしょうが、同じことを伝えるならアゲ気味で伝えることが今日の主流であることは確かでしょう。
「引き寄せの法則」の影響か?
2007年にロンダ・バーンによって提唱された「引き寄せの法則」という概念は、瞬く間に精神世界を席巻し、今日では占いの現場においても当然のように使われるようになっています。もしかすると、この引き寄せの法則が優しい占いを後押ししているのではないかとも考えられます。
引き寄せの法則は、平たくいえば心の中をポジティブにしておくことでよい結果を引き寄せることができるというものです。それを前提とするならば、占い師がポジティブな言葉をかけることがポジティブな未来を引き寄せることにつながっていくことになるわけです。それを考えると、アゲ鑑定という鑑定スタイルの正当性が少し高まる気がします。