今回は、本業の会社に籍を置いたままに、本業とは異なる活動に力を入れる「複業」にスポットを当てた書籍、『会社を辞めずに“好き”“得意”で稼ぐ! 「複業」のはじめ方 (DOBOOKS)』を紹介します。著者の藤木俊明氏はリクルート出身の起業家という王道ともいうべきビジネスマンですが、さすがにその情報力は素晴らしく、とても役に立つ情報が目白押しの本でした。占い師という職業から見れば、自分自身が副業から占い師になるにはどうするのがよいかという目線と、占い師としてのアドバイスに役立つという目線の両面から有用な書籍でした。
「複業」という概念と本の紹介
この本が進めているのは、あいた時間で効率的にお小遣いを稼いでリッチに暮らすという「副業」のすすめではなく、「生き方」を追求するためにもう一つの人生である「複業」を持つべきであるという主題で書かれています。それはどういうことでしょう。
「静かな複業」が本書の主題
会社に一生面倒を見てもらうという時代が過ぎ去った今日、どうすれば安全に生き残っていくことができるかという視点で、生き残りの方法として「副業」を勧める書籍は世にあふれています。この本の面白いところは、生活手段としての収入源は会社員としての給料に任せて、それ以外のセカンドキャリアについては、収入があるかないかという視点にこだわらずに、好きなことをやって自己実現をするのがよいだろうと割り切っている点にあります。それも、会社の上司や人事部に、なるべくばれずに自分のやりたいことを形にしていく「静かな複業」が推奨されています。
「静かな複業」のやり方が満載の書籍
この本には、様々な形で30年にわたって複業を持ち続けてきた筆者の経験から、静かな複業を実現するためのテクニックや知識がたくさん書かれています。本記事でも後にいくつかの概念の紹介させていただきますが、この本の与えてくれる着眼点はかなり実践的であるように思います。どのようにして複業のテーマを決めるかということから、実際のやり方や活動の場所まで、かなりのことを紹介してくれています。
「複業」と占い
この本に書かれていることを読むと、占い師という職業を副業から始めることの価値が見えてくるように思いました。五十六謀星もっちぃは、学卒以降はずっと専業占い師ですが、学生時代に、ある意味「複業」として占い師デビューしております。もしかすると、4年間の複業期間がなければ、今日まで占い師専業で続けることはできなかったかもしれません。
好きなことを専業にすることは必ずしもゴールとは限らない
藤木氏は「会社自分の幸せにとって大切なPieceのひとつ」と考えることを提唱しています。会社を辞めるというハードルの高いことを考えずに、とにかくやりたいことをやろうという著者の主張が集約された言葉といえましょう。
好きなことを仕事にする場合には、最終的にそれ一本で食べていくことを当然のゴールだと思ってしまう傾向があります。しかしながら、実際には好きなこと一本で生計を立てるということは、簡単か難しいかの前に、そもそも正解かどうかがわからないことがあります。例えば、音楽で生活をするために、自分の大事な音楽性を捨てて売れるための歌を歌うことになるのはいやだと考える人もいるでしょう。
占いは「複業」に向いている
占い師という職業も、一部の人にとっては「複業」というスタイルに向いているのかもしれません。それは、稼げるかどうかという問題の話ではありません。例えば、時間をかけて非常に細かな手相を鑑定することこそ占いの神髄と考える占い師さんにとって、生活を支えるという目的のために暗いイベント会場を占いの場に選んで収益を上げることは適切ではありません。そしてもちろん、手相占い師であれば、いくら稼ぎやすいとは言えども電話占いでは自己実現ができません。
占いに対してそうしたこだわりを持っている人にとっては、そのこだわりを捨てることなく、自分の信じる占いを楽しめる範囲で提供することができるのはとても大きなことであると思います。もちろん、電話占い師になるにしても、本業を別に持った状態でスタートすることが与える安心感は、占い師としての基礎力をしっかりとつけるためには非常に役立つことだと思います。生活に追われずに自分の求める占い師像を求めて、そこにこだわりを持って貫いてこそ、熱心なファンを持って安定的に成果を上げる占い師になることができると信じております。
お客様へのアドバイスに生かせる着眼点
この本の提供する情報は、占い師自身の仕事の仕方に影響を与えるだけではなく、特に30代後半以降のお客様の副業に関するアドバイスをする際に参考になるものがあります。
正社員から業務委託という発想
このような考え方があること自体は、なんとなく存じておりましたが、具体的にそのメリットがどのようなものであるかは知りませんでした。著者の出身であるリクルートでは、社員が独立する際に業務委託という形で仕事を与えるという文化があるそうです。様々な業界において、社員としての安定した立場を半分だけ捨てて、自分の好きなことを好きなようにやるために業務委託契約に切り替えるというスタイルをとることにメリットがあるようです。
私の占いの経験上は、職人さんや高度な専門職においてこのようなやり方で独立することがあると思っておりましたが、本書によれば他の業界でも応用できるようです。リスクの少ない独立の方法として、お客様に対する有益なアドバイスになる可能性があります。
5分の4という発想
サラリーマンが通常働くのは、平日の5日間ですが、そのうち1日を他の仕事に当ててしまうという発想があるそうです。その際、日数が5分の4だから、給料も5分の4という提案をすることで、会社にそれを受け入れてもらっている人がいるそうです。私はこういった概念は全く知りませんでした。本書にはその実例がいくつか紹介されていてとても参考になりました。
まとめ
占い師という仕事を副業から始めたいという需要は非常に多いと思います。本書と同じ同文舘出版様より発売の拙著『はじめよう 電話占い師』でも、電話占いをサイドビジネスから始めるという方法を提唱しています。サイドビジネスから本業にすることを当面の目標と考えることももちろん素晴らしいことですが、場合によっては自己実現の手段の一つとして、自らの個性を生かして楽しくやりがいがある生き方を追求するのも素晴らしいことであると思います。