新月から満月、そして再び新月に向かっていくサイクルの中で、月は毎日違う顔を見せます。月の形は一般に28種類に分けられていて、それらを月相と呼びます。占い師になるには、こうした月の動きの基本を押さえておくことは必須の基礎教養であるといえましょう。そこで今回は、日々移ろいゆく月の形それぞれに与えられた文化的な意味や、月の名前について解説したいと思います。
月相入門~月の満ち欠けとは何なのか
世界のどの文化に住まう人でも、いつまで待っても月が昇ってこない日と月がまん丸な日があることは知っていることでしょう。多くの文化圏でそれぞれに意味が与えられる月相ですが、これはそもそもどのようにして引き起こされているのでしょう。
月の形が変わる理由
日によって月の形が変わるのは、太陽と地球と月の位置関係によって引き起こされます。下図のように、月は常に太陽に照らされている半分だけが地球から見えます。地球を周回する月の公転によって、月が地球を挟んで太陽の反対側にあるときには、太陽に照らされている面だけが地球から見えるため満月が観測されます。これはホロスコープでいえば、月と太陽のオポジションに当たる状態です。反対に月が地球から見て、太陽と同じ方向にあるときには、照らされている面は全く見えないので新月になるのです。ホロスコープ上では太陽と月のコンジャンクションの状態です。
満月のカレンダーに時刻が書かれているのはなぜか
次の満月や新月が何日なのか、ちょっと詳しいサイトで情報を調べると、しばしば日付だけではなく時間も記載されていることがあると思います。日常会話の世界では「明日は満月」などといういわれ方をすることが多いですが、実は厳密にはその日上る月がずっと満月や新月な訳ではありません。満月や新月には「その瞬間」が存在します。太陽と月との位置関係は、それぞれの公転によって刻々と変化し続けています。そんな中で、地球を中心に両者の角度がぴったり180度になった瞬間が満月です。
満月の夜とは何か
満月の瞬間である180度より少し早ければ、月の左側にわずかに陰が残り、少し遅ければ右側が少し欠け始めます。 月と太陽の角度は24時間で12度くらい変化します。 そんなわずかな変化は肉眼では観察できませんが、厳密には月相はそのように定義されているものなのです。本来は時間が決まっている満月ですが、それでは不便ですので、旧暦では新月から15日目の夜を名月としていたわけです。現代でも、厳密なルールはありませんが満月に近い月が昇る日を満月の夜と呼称しています。
月相は宇宙規模のイベントで世界共通
月相は宇宙規模の天体の位置関係で発生するものですから、地球規模でいえば時差などに関係なく世界共通です。ざっくりといえば日本が満月の日はアメリカでも満月です。ただし、満月の瞬間に月を観測することができる地域は限られています。満月の瞬間の時刻が日本時間で昼間なら、ブラジルの人は満月の瞬間の月を見ることができますが、日本ではほんの少し欠けた月しか見ることができないでしょう。
月相のそれぞれの名前と意味
日に日に移ろいゆく月には、すべてではありませんが、それぞれ名前がついています。新月からはじまってまた新月に戻るまでの月のサイクルを追いかけながら、知られている名前と文化的な意味を簡単に解説していきます。タイトルの括弧内は新月から数えて何日目かを示しています。旧暦の日付に相当します。
新月・朔・月立(1日目)
太陽と月が地球から見て同じ方角にあるとき、月の照らされている面は地球から見えません。これを新月や朔といいます。旧暦では新月の日を1日としました。一日と書いて「ついたち」と読むのは、「月立ち」に由来すると言われています。また、もしもこの瞬間に、太陽と地球と月がぴったり一直線になっていたら、太陽の一部が月に覆われて日蝕が起こります。
新月の夜は月明かりのない暗い夜になります。そのため新月の闇に乗じて犯罪が起こりやすくなるなどという言い伝えもありますが、歴史や科学による裏付けはありません。占星術的な意味合いとしての新月は、ここから月が膨らんでいくことにちなんで、様々な物事が大きくなっていくことの暗示とされています。新月から満月にかけての期間は物事を吸収して力をつけることができると考えられています。
近年のスピリチュアルの考え方に乗って、新月に祈りを捧げると願い事が叶うという話が有名になりました。新月を迎えた瞬間から48時間以内に願い事を紙に書いてお祈りすると、その願いが実現するとされています。このとき、願い事は「なりますように」ではなく「なります」というような宣言の形にするのがポイントです。
既朔・ 繊月・ 二日月(2日目)
新月の翌日の月は繊月や既朔と呼ばれます。なお、繊月という言葉は、細い月という意味で、三日月のことを指す場合もあります。特に八朔の翌日である旧暦8月の二日月は有名です。太陽の近くにあるため、日没のほんの短い時間にだけ観測することができます。
三日月・眉月・若月(3日目)
二日月はほんの短い時間しか観測することができませんので、三日月は新しい月がようやく人前に顔を出す付きであるとされています。満月に比べて20分の一程度の面積しかないこの月は、多くの文化圏で特別視されてきました。西洋占星術の月の記号も三日月をあしらったものです。また、イスラム教のシンボルにも三日月があしらわれています。フランス語ではクロワッサンといい、パンの名称として知られています。
上弦の月・半月・弦月・弓張月(7~8日目)
新月から7日ほどで、月はちょうど半分になります。いわゆる半月と呼ばれるこの形ですが、新月から数えて先に訪れるものを上弦の月といいます。月を弓の形に例えて弦が上に来るのが上弦の月であると考えられることもありますが、弦に相当する平らな面が上になるのは、月が沈みかける瞬間だけです。実際には弦の上下ではなく、旧暦で上旬に起こる弦月だから上弦の月と呼ばれるという説があります。
占星術的には、満月に向かうパワーが高まっている時期の月ですので、前進するために頑張るならこの時期が適していると考えられます。上弦の月には物事を育てる力が宿っています。この先伸ばしていきたいけれど、なかなか形にならないことがあるなら、上弦の月に祈るのがよいでしょう。願のかけ方は新月と同様です。
十三夜・豆名月(13日目)
満月について二番目に美しいとされているのが十三夜の月です。特に中秋の名月の一ヶ月後に相当する旧暦9月13日の月は、「後の月」と呼ばれて愛でられました。これらは両方見ることが理想とされていて、どちらかしか見ない場合は「片見月」といって、縁起が悪いとされています。
小望月(14日目)
満月の前夜の月は小望月と呼ばれます。「化物の正体見たり枯尾花」という句で知られる俳人の横井也有が「朝顔に届かぬ影や小望月」という句を残しています。「子もち月」と表記されることもあり、十四夜と妊娠を関連付けたような歌詞の童歌もあります。
満月・望・望月・盈月(15日目)
地球から見て、太陽の反対側の方角に月があるとき、満月になります。言わずと知れた、最も美しいとされる月です。そしてもしもこの瞬間に、太陽と地球と月がぴったり一直線になっていたら、地球の影が月面に投影されて月蝕が起こります。
満月にはパワーが宿ると考えられています。新月から徐々に力を蓄えて大きくなってきた月が、ついに最高潮を迎える瞬間が満月なのです。占星術では、太陽と月が180度になって満月を迎える瞬間の前か後かを重視します。満月が完成するまでは月がエネルギーを蓄え膨らむ時期であるのに対して、満月を少し過ぎればたちどころにエネルギーを放出して沈んでいくわけです。
伝統的に占星術では、満月までの期間には物事が膨らむので、結婚などの発展を望むことは上弦から満月までに行うのがよいとされています。ただし、外科手術などの出血を伴うものについては、満月から新月に向かう月が小さくなるタイミングで行うのがよいと言われています。
十六夜(16日目)
満月の日には、太陽が沈むのとほぼ同時に月が昇ります。しかし、それ以降の月が欠けていくサイクルでは、月が出てくる時間は毎日約50分ずつ遅くなっていきます。満月の翌日の月は十六夜とかいて「いざよい」とよみます。これは、古語の「いざよう(猶予う)」という言葉に由来します。いざようとは、ためらうという意味です。日没後すぐに上らずに、少しためらってから昇る月というような意味合いです。
立待月(17日目)
十六夜よりもさらに少し遅くなっても、まだまだ立って待てる位の時間に上ってくる17日目の月は立待月といいます。
居待月(18日目)
月を待っているうちに座ってしまうくらいなかなか月が昇ってこなくなってくる18日目の月は、居待月といいます。上ってくる時刻は季節によって異なりますが20時前後です。
寝待月・臥待月(19日目)
満月から4日を経ると、月が昇ってくるのを起きて待っているのは大変になります。寝床で寝ながら待つことになる19日目の月は、寝待月、もしくは臥待月といいます。
更待月・亥中の月(20日目)
二十日月とも呼ばれるこのあたりまで来ると、もはや待っているのかどうかわからない名前になります。此の月が上る時刻は22時くらい、すなわち亥の正刻の前後であることから亥中の月とも呼ばれます。
下弦の月・半月・弦月・弓張月(23日目)
満月から新月に向かう中間地点の半月は、下弦の月といいます。上弦の月がそうであったように、下旬の弦の月だから下弦の月と呼ばれているのであって、向きは関係ありません。なお、月の表面の海と呼ばれる色の濃い部分の割合が左右で違うため、同じ面積であっても上弦と下弦では明るさが違い、上弦の方がやや明るく輝きます。
日本の伝統では、二十三日の夜には月待ちの夜会を催し、飲食をともにしたり念仏を唱えたりしながら、下弦の月が昇るのを待っていたそうです。また、この日は新しい薬を飲み始めたり、鍼灸を行うことを禁忌したという言い伝えもあります。
占星術では、下弦から新月に向かって月がどんどんと細くなっていく期間は、自分の内面と深く向き合うべき時期とされています。地に足がついた行動を心がけて、自分の内面を磨くのがよいでしょう。また、被害を拡大したくない問題を処理するならこの時期がいいと考えられます。お風呂のカビ取りなどはこの時期が適しています。
有明月(26日目)
月が空にある状態で夜が明けることを「有り明け」といいます。そして広義には十六夜以降の月を総称して有明の月といいますが、狭義では26日目の月を特に有明の月といいます。江戸の品川から高輪のあたりなど、地域によっては愛染明王を本尊として二十六夜講と呼ばれる夜会を催していたことが知られています。
まとめ
月の満ち欠けは数ある天体ショーの中でも最もオーソドックスでありながら、最もダイナミックで、どの文化圏の誰もが知っている一般的な人類の知識です。この月の満ち欠けが持つ文化的背景、そして占星術的な意味は、今日でも占いの世界では生かされています。
西洋占星術では、当然ながら人が生まれた日の月の形も占いの対象になります。自分や気になる人が生まれた月がどのような意味を持っているのか、知りたくなったら是非とも五十六謀星もっちぃにご連絡ください。また、もし何か悩み事を抱えている場合にも、月の運行を踏まえた悩み解決の手段を提案することができるかもしれません。五十六謀星もっちぃの鑑定依頼はこちらです。