命卜相の元は仙道五術
中国に伝わる五つの術「命卜相山医」
一般的に占いは、命・卜・相という三つのジャンルのいずれかに区分けして分類されます。この区分けは、中国に伝来する仙道五術と呼ばれるものに由来しています。仙道五術とは、文字通り仙人の道、すなわち神通力を持った術を使う者の道において大切な、命術・卜術・相術・山術・医術からなる五つの術の総称です。
現代の日本で使われる命卜相とは、この五術から山と医を除いた3つの術のことです。ちなみに、医術は病を癒やす医療の技術、山術は超自然的なパワーを使って不老長寿を目指すなどする術のこととされています。
命卜相は占いの王道
現代の占い業界において、命卜相に分類される術をそれぞれ最低一つずつマスターすることは、網羅的な占いをする上でとても大切なことと考えられています。それぞれに役割や判断材料の異なるこれらの術を使いこなすことで、より多角的で深い占いが出来るといえます。
「命」~命術は生年月日の占い
変わらない宿命や人格才能を占う
命術は、生年月日や生まれた時間と場所のように、人の一生において変わることのない要素を元にした占いのことをいいます。主として性格や持って生まれた能力を占います。占術によっては、宿命的に定められているものや前世などを占うこともあります。
生年月日は変わりませんので、同じ命術を使う限り何度占っても同じ答えを出すことが出来ます。それ故に人の一生を長い目線で占う場合に効果を発揮します。人生を生き抜くためのロードマップのようなものであると解釈されることもあります。
命術の歴史
歴史上知られている命術の古い記録としては、とある男児の出生時の天体の位置を記した紀元前400年頃のホロスコープがバビロニアで出土しています。これが、歴史学的に信頼出来る最も古い命術で、現代の西洋占星術の直接の祖先と考えられます。
命術の代表例
代表的な命術として、西洋系の占いでは占星術や数秘術があげられます。中国系の占いでは、四柱推命や紫微斗数、六壬などが有名です。日本の占いとしては、九星気学や算命学などがあります。
「卜」~卜術は偶然の結果を使う占い
具体的な出来事や状況を占う
卜術は、生年月日や手相などと行った「人」に関連する要素を使わずに、偶然の結果を基にして占う占術の総称です。人物だけではなく事柄を占うことが出来るため、かなり幅広いテーマで占いをすることが出来ます。質問を受けて、その質問に合わせてカードを引いたり筮竹を繰ったりするため、相談内容に対してより深く、場合によってはどこまでも細かく占いを展開することが出来ます。
長期的な計画を立てるというよりも、短期的なことを占うために使われることが多い占術ですが、人の気持ちや具体的に置かれている状況などを読む占いとしてはピカイチの適性があるジャンルであるといえるでしょう。
卜術の歴史
卜術の歴史は相当に古く、おそらく人類最古の占いは卜術であると考えられます。歴史学的に証明されている中で最も古い卜術は、マリで発見された紀元前19世紀頃の肝臓占いの記録です。占いの記録としても、これが最も古いものであると考えられています。
ジャケッタ・ホークス 著『古代文明史 1 メソポタミアの生活』 263ページより図表を引用
ちなみに肝臓占いとは、古代メソポタミアで頻繁に行われていた前兆占いの一種です。羊などの動物の内臓の様子から、人間に起こることを予測していました。たまたま開いた動物の肝臓から占いの答えを抽出しているため、これは卜術の一種であると考えてよいでしょう。
また、中国の殷の時代に発祥をたどる「亀卜」と呼ばれる占いはあまりにも有名です。亀の甲羅に熱した金属の棒を押し当てて、それによって生じる亀裂から運勢を占ったとされています。その結果を記録するために生み出された甲骨文字であり、また亀卜の様子そのものを表したのが、他ならぬ「卜」という文字なのです。
卜術の代表例
代表的な卜術としては中国の易占いや西洋のタロット占いがあげられます。他にもルーン占いやルノルマンカード、オラクルカードなども卜術に分類されます。変わり種では、質問が生まれた瞬間を質問の誕生日に見立ててホロスコープを作る、ホラリー占星術などもあります。
「相」~相術は形を見る占い
後天的な積み重ねや、そのものが持っている力を占う
相術は形になって現れているものを見る占いです。手相占いがあまりに有名で、相術の代表選手ですが、相術は必ずしも人体だけを対象にするわけではありません。例えば名刺やはんこの形の吉凶を見るものなどが有名ですが、知覚で認知することが出来るあらゆるものを対象にすることが出来ます。
ものの形は時間の変遷とともに少しずつ移り変わっていくものです。そういった特性から、人間を占う相術では、その人が積み重ねてきたものや、後天的に得た力を占うことが出来ます。また、ものを占う場合には、そのものの持っている力を見ることが出来ます。
相術の歴史
西洋における古い人相学の記述で有名なのは、アリストテレスによるものです。彼は『動物誌』などの著作において、少しだけ人相の見方について論じています。その後『人相学』というそのものズバリ人相について論じた本がアリストテレスの名義で出版されましたが、これは実際には弟子の手によるものとされています。
いずれにしてもアリストテレスの名義でなされたその『人相学』が、西洋で最も古い、体系的な人相学の書籍といえます。この内容は、動物の特徴からの類推をメインとしています。例えば「ライオンのように唇が薄く両端がだらりと下がっている者は、矜持のある者だ」などという方法で人の特徴を捉えました。この書には、顔つきの他に髪の毛の質や肩の骨格などの判断方法も紹介されています。
東洋では紀元前六世紀頃の叔服(しゅくふく)という人物が、中国における古い時代の人相の研究者として名を残しています。しかし残念ながら彼の行った人相の内容は現代に残っていません。現代の中国の人相学の直接の祖先とされているのは、麻衣という仙人が、紫微斗数の発案者としても紹介した陳摶(ちんたん)に託したとされる『神異賦』という相術書です。
相術の代表例
手相占いや顔相占いがまさにこの代表格です。ちなみに一般に使われる人相学という言葉は、顔だけではなく手相やその他の人間に関する相術を総合的に含めた言葉です。
そのほかにも、先述した名刺相や印相、墓相に家相など枚挙にいとまがありません。そして姓名判断や血液型占いもここに分類されます。