プロの占い師になるには、これだけは必ず考えなければない、欠かすことのできない要素があります。それは料金の設定です。占いの芸妓をプロとして商うからには、その技術に適した方法で値段を定める必要があるのです。とはいっても、多くの占い師さんは、どこかの店に所属してデビューすることをキャリアのスタートにすることがほとんどだと思いますので、何の迷いもなく与えられた料金設定を受け入れていることもあるでしょう。今回は、占い以外のビジネスから占いの世界に飛び込むことを考えている人に向けて、占いの料金の考え方について再考してみたいと思います。
料金の設定基準の様々~時間か内容か
占いの料金の設定は、時間制か件数性で定められている場合がほとんどです。まずはそれらのあらましと、その他の課金方法について検証します。
時間による課金は明朗会計な方法
単位時間ごとに料金を定める時間課金という仕組みは、最も明朗な会計を可能にするわかりやすいシステムであるといえます。時間制であれば、時計やタイマーによって客観的にわかりやすく販売した量を測定することが可能です。そして、時間を拘束するというカタチをとることによって、本来はカタチのない商品である占いに対しての課金の心理的ハードルを下げることもできます。
占い師の目線からしても、時間制の料金であれば、予約の管理をしやすいというメリットがあります。また、制限時間がなければ、鑑定の筋を伝えた後にも、長めの世間話に突入してしまうリスクがあります。料金を払ってもいいからとにかく話を聞いてほしいというお客様の需要を受け入れるためにも、時間制の料金は非常に合理的であるといえましょう。
時間制の欠点
時間制で占いを提供することの欠点としては、相談内容がどれくらいの時間を要するものかの見当がつかないという点が上げられます。例えば、恋愛の相談をするとして何分くらいかかるかを占い師に尋ねたとしたら、「内容によりますが、30分から1時間程度です」という答えが返ってくることでしょう。多くの占い館でのメインのコースは、30分6000円と1時間1万円の2種類があるくらいでしょうから、これでは何の答えにもなっていません。
占い師としても、相談内容にどれだけ時間がかかるか、はっきり答えられないのには理由があります。それは、「お客様がどれくらい話すつもりか」がわからないからです。生年月日や手相を見て、占い師が一方的に話をして、少し質問を受ける位であれば、かなり正確な鑑定時間を想定することができます。しかし、相談者の聞きたいことに答える占いを追求すれば、恋愛相談に仕事の問題が絡んでくることも珍しくありません。相談内容の全容を理解するまで、何分かかるかを宣言することは難しいのです。
件数制の方がよい場合
件数による料金制度の場合は、時間に限らず、質問の件数ごとにいくらかのお金が発生する仕組みです。この場合は、相談者の目標を実現するための方法を筋道立てて長く説明した場合も、「無理です」という一言で終わった場合も、極端な話、同じ料金ということになります。
相談者の質問内容がしっかりと定まっていて、占いになれている場合にはこの料金設定は非常に便利であるといえましょう。気になる相手と結婚できるかどうか、それだけが気になるという場合などは、件数制の相談の方が納得いくまで占いの答えを聞くことができますし、占い師としても、時間を余すことも、不足することも心配することなく占いに集中することができます。
件数制のデメリット
件数で料金を決めることの最大のデメリットは、件数の切り分けをどうするかが不明瞭になりやすいということです。例えば上記のような、気になる相手との結婚の相談に際して、親子関係の問題が絡んできた場合にはどうなるでしょうか。もしもそれが、家業の存亡と深く影響のあることだったらどうでしょう。親子関係と家業の行く末を加えた3件というカウントになるかもしれません。
もっとも、最初からそのような料金設定であることを明記していれば、それで問題がないことです。むしろ、二人の生年月日の相性だけで終わる相談と、家業のことまで絡んでくる相談が同じ料金というのではかえって不公平です。一つの相談に複数のテーマが絡んでくる場合の切り分け方が明瞭であるならばそれでいいでしょう。
相談内容による特別な料金設定
これは番外編的なことなのかもしれませんが、相談内容によって特殊料金を設定する場合も珍しくありません。命名や家相判断がその代表例です。人名や芸名、会社名などを考えるのも占い師の仕事の一つです。こうしたものは、今から30分で考えてくださいと依頼されてできるようなものではありません。少なくとも1週間は折りにつけて考えては寝かせて、慎重に練りたいものです。それで足かけ1週間の鑑定だからといって、単純計算で168万円とする訳にはいきません。しかし、名前を伝えるのに10分しかかからないから1000円ですとも参りません。
家相判断は、正式には図面を見るだけではなく、現地に赴いて様々に確認することが必要になります。そういった場合には、時間あたりの料金ではなく、出張料が必要になってしかるべきです。それ故に、命名や家相判断には通常の料金体系とは異なる特別料金が設定されるのです。
占術による料金設定
これは、命名や家相が特別料金であることの延長線上と捉えてもよい概念かもしれませんが、占術によって値段を設定するという料金制度も存在します。例えば、手相占いは1000円でタロット占いは2000円、占星術とタロットで5000円というような料金設定があり得るでしょう。
注意するべきこととして、これは、手相占いの格が低いという意味ではありません。1000円の手相占いでは、手相に出ている線の説明をするだけで質問はできないから1000円、そしてタロット占いは質問に答えるから2000円というような意味づけがなされているわけです。
占術ごとに値段が決まっているのは、ある意味では質問の内容によって値段が決まっているというのと同じことであるともいえます。ざっくりいえば、自分の状態を知る占いは安くて、相手の気持ちを知る占いは高いという訳です。それは不自然がないことです。
手相では自分のことはわかりますが、普通は相手の気持ちはわかりません。中には手相占いでも相手の気持ちを読み当てることができる占い師は存在しますが、それほどの達人の鑑定は普通、1000円ではありませんので、もちろんこの話の範囲ではありません。
占いという商品を考える
占いという商品の価値の根拠がどこにあるのかを考えることによって、占いのどこに課金をするのが適しているのかが見えてくると思います。それは一般論としての答えではなく、おそらく占い師ごとの個性と持ち味に従って定まるものであると思います。
時間か内容か
まず占い師としては、時間を拘束されることに対して、あるいは占い時間に応じて料金が生じるというのは非常にわかりやすい労働対価であるといえます。上述したとおり、それはお客様にもメリットがありますし、悪いことではありません。しかし、お客様が求めていることの本質は、占い師の時間を拘束することではないはずです。
お客様が占いに求めていることの本質的なものは、占いによって悩みを解決することだったり、前向きな気持ちになったりすることのはずです。あるいはわからない問題を的中させてもらうことそのものかもしれません。
聞きたいお客様と聞いてもらいたいお客様
占い師の目線だけで料金を設定するなら、占い師の出す結果を聞くことこそを求めているお客様には件数制の料金を設定するのが最善です。反対に話を聞いてほしいというお客様に対しては時間制の料金が最善手です。
もちろん、こうした料金のルールをお客様の顔を見て決めるわけには参りませんので、現実的には占い師自身が自分の特性を踏まえて考える必要があります。短時間で納得させることに自信があるなら、件数制がよいでしょうし、話を聞いてあげることが得意なら時間制の料金が理想です。
マネタイズ考察
もう少し具体的に踏み込んで、占いの料金の設定を考えてみます。
自動延長は可能か
時間制の料金を設定するとして、一つのネックになるのは延長料金の問題です。普通は、延長料金は10分などの単位時間ごとに定められ、占い師はそれを請求する権利があります。しかし、対面鑑定の、特に時間に余裕がある店や占い師の場合、その延長料金を正当に徴収していないことが多く見られます。お客様同士やほかの占い師との兼ね合いからも、非常によくないことではありますが、この悪弊から抜けられない占い師がたくさんいます。
これを解決する最も有力な方法は自動延長です。最初から延長料金を自動で取ることを説明しておけば、当然ながら法的なトラブルはありません。電話占いにおいては、そもそもの課金が1分ごとですので、事実上、自動延長と同じシステムが敷かれていることになりますが、全く問題なく機能しています。対面鑑定においてもこれを導入することは有力であるといえましょう。
月額制に望みはあるか
時間制や件数制ではなく、月額制という料金の設定方法も考えられるところの一つです。これはつまり、税理士や弁護士の顧問契約に倣うという手法です。コンサルタントの五藤万晶氏は、こうした月額制の顧問料を取るには、まず慣例として業界にそういうシステムが敷かれていることが前提になるといいます。普通は一回ごとの料金なのに、自分だけが月額制を主張してもユーザーがついてきにくいだろうというのです。
しかしながら、最近では月額3000円でカレー食べ放題などというサービスも登場しています。月額料金の中で、何らかのルールを定めた上で占い放題というシステムを構築するのも、やり方によっては相当なチャンスが眠っているのかもしれません。
内容把握後の見積もり
料金を時間制ではなく、質問内容によって定めるという方式もあり得ると思います。お客様から相談内容を聞き出して、どのような方法で何分くらいで占えるかを考えた上で、料金を提示して占うという方法です。ただし、今のところ採用されている例を私は知りません。
その場合の問題は、お客様が相談内容を説明しているだけでかなりの時間が過ぎる恐れがあるということです。相談内容の説明に30分を要した後に、料金の折り合いがつかなければどうするのかという問題が生じるわけです。
解決策としては、問診票のようなものを事前に渡すか、オンラインで打ち込めるようにしておいて、それを元に料金と所要時間の見積もりを行うという方法です。質問内容がわかれば、大体どれくらいの時間でどれくらいの料金が適切かは決められるものです。
この方式を採用すると、例えば両思いの結婚相談と、複雑な不倫の恋愛のような、手間が全然異なる相談内容に対して、堂々と別な料金をつけることができる点にメリットがあります。占いをする上でのエネルギーの消費や求められる技術力は、相談内容によって異なるので、それを反映した料金を設定することは占い師の理想型であるように思います。
まとめ
占いという仕事を商品として捉えたとき、どのような売り方をするのが最善か、一概には定められません。占いの料金の設定は、時間による課金が最も多く、これからもその流れは簡単には変わらないと思います。しかし、占い師さんごとに、自分のなりたい占い師像に併せて課金スタイルを考えることができるようになれば、さらに多様な鑑定スタイルが生じて、占い文化がさらに栄えていくと考えます。
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