「精神分析学」のフロイトに関する占いに役立つ知識

 占いをする上で、あるいは占いを考える上で必ず役立つ隣接した学問分野の有名な研究を紹介するシリーズです。心理学や精神医学、哲学や天文学などの巨人の業績を占いに役立つ情報としてまとめてみたいと思います。

 1856年5月6日にオーストリアで生まれた精神科医、ジークムント・フロイトについて解説します。精神分析学の祖として知られる彼はどのような点で占いに影響を与えているでしょうか。

精神分析の始祖

フロイトの精神分析は何が斬新だったか

 フロイトと同時代の精神医学界では、神経症の原因を脳の物理的な問題であると考えられていました。それに対してフロイトは、無意識という概念を持ち出すことによって、神経症の原因を人の内面的な問題として考えようとしました。

 精神分析学は、人の行動は意識だけでコントロールされているわけではないという仮説を出発点としています。意識的に理解していない、無意識にあるものが表面ににじみ出て、行動を左右しているというのです。

 人はつらい過去や欲望から目を背け、それを意識しないようにします。しかし、それで仮に、そういったネガティブなものが表面上の意識から消えたとしても、実は無意識の部分には、そういったネガティブなものが溜まっているのだとフロイトは考えたのです。そしてそのネガティブな無意識の思考が、形を変えて表に現れるのが神経症だというのです。

神経症の原因は性的願望!?

 無意識に追いやられて抑圧された苦しみや欲望の中でも、とりわけ性的な抑圧が神経症の大きな要因になっているとフロイトは考えました。幼児期に起こるとされる無意識の性的葛藤、すなわちエディプスコンプレックスが、神経症の発症に影響しているというのです。この考えは当時のヨーロッパの紳士淑女たちに衝撃を与えました。

 フロイトは何かにつけて性衝動や性的葛藤などを持ち出し、すべてのことを性的な問題に還元しようとします。これを性的一元論といいますが、後にこのことがフロイト批判の対象になってしまいます。

たくさんの有名な弟子たち

 フロイトの理論は斬新であり、精神分析学という新しい分野を切り開きました。しかし、彼はユダヤ人であったこともあり、大学で教鞭を執るチャンスには恵まれず、開業医として診察に当たりながらコツコツと研究を続けました。そんな彼の元にはたくさんの若者が学び、後の精神医学や心理学に大きな足跡を残します。代表的な弟子にアドラー、ユング、ランク等がいます。また、アイデンティティの概念で有名なエリクソンは、フロイトの娘に師事して精神分析学を学んでいます。

フロイトの思想

治療法としての精神分析学

 抑圧されて無意識に押し込められたコンプレックスが神経症の原因になるのだから、それを意識下に引き出して、立ち向かおうとすることで神経症を治療することができるとフロイトは考えました。これが治療法としての精神分析の論旨です。

 しかし、実際にはこの治療法はそれほど多くの臨床データを有しているわけではありません。治療対象となるのは、症状が比較的軽度で、裕福な生活環境にある人のみでした。患者のプライバシーを理由に、臨床データのほとんどが秘匿されたこともあり、その実態は不明瞭な部分も残っています。

 しかし、この治療法自体は、当時の淑女たちに人気だったようです。その治療の医学的効果はともかく、自分の無意識にある葛藤や抑圧されている感情を分析されて、それを呼び覚ましてもらうことに癒やしを感じる人が多かったそうです。ある意味において、これは占いによる癒やしと相通じる部分があるように思います。

『夢判断』は夢占いに影響を与えた

 古来夢は、科学的な分析の対象というよりは宗教的な神秘に満ちた解説の対象とされていました。フロイトの時代になってようやく、科学的なアプローチとして、睡眠中の外部からの刺激が夢に影響を与えるという研究が取り沙汰されるようになります。

 フロイトはそれを一歩進めて、夢は無意識の自己表現であると考えるようになりました。一見無秩序に見える夢の内容も、夢の主の潜在的願望という鍵を使って読み解けば、一つの筋のある物語になると考えたのです。

 この本を執筆するに当たり、フロイトは多くの夢の実例を集めました。このデータやフロイトによる解釈の方法論は、今日の夢占いのテキストに少なからぬ影響を与えています。

フロイト批判

カール・ポパーによる批判

 ポパーはオーストリア出身の哲学者で、反証可能性があることが科学であることの要件であるとする説を説いたことで有名です。彼は、その反証可能性がないことを理由に、フロイトの精神分析学を疑似科学と断じて批判しました。

 反証可能性とは、文字通りその理論が間違っていると証明できる可能性のことです。例えば、地球上で最も重い金属はオスミウムであるとされています。ですが、新たに重たい金属が発見されるか、二番目に重たいとされているイリジウムの方が実は重たかったという証明がなされれば、このことは簡単に反証されてしまいます。このように間違いを認める可能性があるという態度が、科学と非化学を分けるというのがポパーの学説です。

 反対に、悪いことをしたら罰が当たるなどといった宗教の教えなどは、反証のしようがありません。このようなものが悪いといっているのではありませんが、ポパーは少なくとも科学ではないといっています。フロイトは精神分析学に対して正当な批判をしようとする人を精神病者であると決めつけてしまったり、論拠を否定された後には本当の論拠は「秘伝」であるなどといったりしてしまいました。これは科学者として適切な態度とは認められなかったようです。ポパーはこの論法で占星術も同様に科学ではないと解説しています。

アイゼングによる批判

 占い業界では、『占星術―科学か迷信か』などの著作で知られる心理学者のハンス・アイゼンクは、性的な問題に過剰に傾倒し、科学者としての態度を見失ったフロイトを強く批判しています。彼は、『精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落』において、フロイトが妻とセックスレスになったことと、コカインを使用したことによって人格豹変したとまでいっています。

今に生きるフロイト

 フロイト自身の研究成果そのものは、今日の精神医学の世界では否定され、すでに過去の学問になってしまっています。しかし、精神分析学に始まったフロイトの試みは多くの弟子たちに引き継がれ、その志は今日にもなお生き続けています。また、彼の著作がその周知に大きく貢献した、心的外傷、すなわちトラウマに関する業績は、今日においても十分に通用するものであるといえます。

 占いに関連する教養としては、ユングの師匠としてのフロイトが注目されることが多いと思います。ユングの視点から見たフロイトについては、後にユングを取り上げる際に考察します。

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