今回はメランコリー親和型性格で有名なドイツの精神医学者、テレンバッハについてです。
うつ病になりやすい性格を発見
主著『メランコリー』
フーベルトゥス・テレンバッハは、1914年3月15日にドイツで生まれた精神医学者です。彼の研究で有名なのはメランコリー、すなわち憂鬱についての分析です。そのものズバリの主著『メランコリー』において、メランコリーを発動しやすい人の特徴について述べたことが、彼の業績としてもっとも有名です。
メランコリー病前性格
特定の病気にかかりやすいことが統計的に証明されている性格のことを、病前性格といいます。平たくいえば、食いしん坊が肥満になりやすいというようなもののことです。テレンバッハは、うつ病の原因は器質的な問題だけでなく、特定の病前性格が存在するのではないかと考えて研究を行いました。その結果、うつ病の病前気質として3つの特徴を発見し、それをメランコリー親和型性格と名付けました。
メランコリー親和型性格とは
テレンバッハはメランコリー親和型性格の特性として以下の三つをあげています。
几帳面
メランコリー親和型性格の第一の特徴は、几帳面であることです。どんなことに対しても真面目で細かいことにこだわりすぎてしまう人は、メランコリーに陥りやすいとテレンバッハは指摘します。几帳面であることは一般的に好意的に受け入れられるものです。その評価が本人のさらなる頑張りに対しての過剰な期待へと変わり、心身の損耗につながるのだといいます。
秩序志向
秩序思考は、秩序愛などと訳されることもあります。転居や人事異動、結婚などによって自分の生活の秩序が崩れることに対しての嫌悪を抱きやすい人もまた、メランコリーになりやすいとしています。変わらぬ暮らしに安心を感じるのはある程度普通のことではありましょうが、それの度が過ぎる場合には注意が必要だとテレンバッハは指摘します。
他者配慮
他人に対しての配慮をしすぎることも、メランコリー親和型性格の一つとしてあげられています。他人から嫌われることを極端に恐れて、その発言を気にしすぎてしまうことや、他者に気を遣いすぎるあまりに自分の主張をすることができないようなことが、心身の損耗を招くと考えられています。
メランコリー親和型性格とは良い人のこと
これら三つのメランコリー親和型性格は総合して一言でまとめれば良い人です。お人好しが損をすると一般的にも言われますが、テレンバッハは損をするばかりか精神を摩耗するとまで指摘しているわけです。これらの性格と自分の占いの要素を組み合わせることで、占いの理解を深めることができるかもしれません。
日本での影響は?占い師に役立つか?
邦訳と二度の来日
テレンバッハの学説は、世界の中でも特に日本で人気が高いようです。それには、彼の二度の来日と、著書が日本語訳されて読みやすい状況にあることが理由であろうと指摘されています。
占い師としての感覚からすると、このメランコリー親和型性格は日本人に比較的多い性格傾向であり、頑張りすぎて心身を消耗する日本人の姿にぴったり重なります。そういった背景もあって、日本での評価が高いのだろうと推察します。ただし、海外ではこうしたうつ病の病前気質の概念はあまり注目されなくなっているようです。
治癒神話
実際の医学の場面においても、メランコリー親和型性格は日本において一定の実績を上げていた時期があるそうです。頑張りすぎによるうつを見極める際に、テレンバッハの学説に従うことで効果的な治癒が期待できたそうです。しかしながら、性格と病状の関連だけを指摘して、すべてを性格のせいにしてしまうことには社会的な抑圧としての批判対象になることもありました。
精神医学の教科書に必ず登場
今でも精神医学について触れる教科書にはテレンバッハの『メランコリー』は必ずと言っていいほど触れられているそうです。これから先も日本においては、テレンバッハの影響は少なからず続いていくものと考えられます。
占いの知識としては、この性格とメランコリーの関連性が指摘されていることを知っておけば、何らかの場面で役に立つ可能性があると期待しています。ただし、現在支持される最新の学説ではありませんので、占いに出ている答えの補助的情報として活用する姿勢が大切です。また、これは精神医学に関することですので、占い師は慎重な態度で扱うことが必要です。