時間が流れる方向についての考え方~過去と未来の占い哲学

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 占いの重要な役割の一つは、いうまでもなく未来を知ることです。しばしばそれは、未来を変えるためのアドバイスをするために、現状のまま進んだ場合にたどり着く未来を知るという目的意識をもって行われます。ここで前提となっているのは、未来は変えることができるという考え方です。このような未来のあり方を支える、時間に対しての考え方について今回はまとめてみたいと思います。

そもそも時間の流れとは何か

 過去から未来に向けて、めまぐるしいスピードで流れているような感覚のある時間ですが、そもそも時間の流れとはどのようなものなのでしょうか。まずは、自然科学的な視点が捉える時間について、なるべくシンプルにおさらいしてみましょう。

自然科学が規定する「時間の矢」

 ビールをなみなみ注いだジョッキを不注意でテーブルから落としてしまったとしましょう。くるくる回りながらビールを四方に飛散し、着地と同時に鈍い音を上げてジョッキはガラス片となりフローリングにへこみができる。この悲劇は、決して後戻りすることができない取り返しのつかない事象です。袖に触れてジョッキがテーブルを離れた瞬間からに、Mrマリック級のマジシャンが同席していない限り、この流れを止めることはできません。このように、取り返すことができない現象によって確認できる時間の不可逆性を、天文学者のエディントンは「時間の矢」と表現しました。

時間の流れを証明するエントロピーの増大

 きれいに片付けたデスクがいつの間にか散らかっていることはあっても、汚れきったデスクがいつの間にかキレイになっていることはありません。もしあるとすれば、それは素敵な奥さんがエネルギーを注いで片付けてくれたからです。これは宇宙全体の縮図です。電磁気学で有名なマックスウェルは、宇宙は乱雑さを増大させ続けるということを発見しました。砕けたジョッキを溶かしてリサイクルするように、何らかのエネルギーを消費して整理しない限り、宇宙はどんどん乱雑になっていくのです。これによって時間の流れの方向に一つの回答がなされました。つまり、乱雑な方が未来で整頓されているのが過去であると考えられるようになったのです。

 これを論証する一つの理論として、もしも時間の流れに遡って乱雑さを取り除くことが自然にできるなら、空気の中から活発な分子だけを取り出すことで、そこら中の空気からエネルギーを無限に作り出すことができることになってしまうというパラドックスを提起しました。これをマックスウェルの悪魔といいます。

結局時間が何なのか、今の科学ではわからない

 時間という量は、直接それを計測する手段がありません。宇宙という天然の時計によって計られる恒星時や、クウォーツの振動数で計測する方法も、これらはあくまでも時間を直接量として捉えているわけではありません。全宇宙はたったの五分前に作られたばかりだったと仮定しても何の矛盾もないとする、ラッセルの「世界5分前仮説」は有名ですが、実は時間の概念は人の脳の中にしか存在しません。シンプルにいえば、昨日という時間が存在したと証明できるものは、昨日の思い出しかないのです。最近ではむしろ、実は時間などはそもそも物理世界には存在しないのではないかという考え方が勢いを増しています。少なくとも今の段階の科学では、時間とは何かという問題に結論が出ていないといって間違いないでしょう。

時間と未来を考える思考モデル

 時間という概念に対して、自然科学が結論を出していないということは、その時間の概念に対しての仮説を自由に立ててよいということです。ましてや時間の流れは脳の中だけにあるものなのであればなおさらに、占い師の哲学によって捉え方があって当たり前の世界といえましょう。未来を自由に組み立てることができるという理論の証左となる、時間に関する有名な理論を二つ紹介しましょう。

平行宇宙の概念

 目の前にコーヒーがあったとして、そのまま何事もない未来と、それをパソコンに引っかける未来とが、両方とも存在しているという考え方が平行宇宙の概念です。パラレルワールドなどとも呼ばれます。ここで大切なのは、コーヒーを手に持って引っかけることによって初めて、パソコンが壊れた世界が誕生するのではなく、そういう行動に出る前からその世界が存在しているということです。人間の自由意志による行動は、すでに存在している世界のいずれかに進むための鍵であると考えるわけです。この説では偉大な宇宙には無限大に多くの平行宇宙が存在していると考えます。

 占いの目線で見るなら、この考え方を採用することによって未来の選択肢を複数示すことができるようになります。すなわち、A君、B君、C君という三人の好きな人がいたとして、そのうち誰と結婚するかと聞かれたときに、「時間の矢」のような決まった未来があるのではなく、どの未来も選択可能だと解釈することができるわけです。それぞれの未来にたどり着くための鍵に相当する行動を占うことによって、それぞれの未来が起こる蓋然性や、それぞれの善し悪しを定めることができます。その鍵が、「龍の首の玉を持ってくること」というようなあまりにも難しい場合は実現不可能な未来と考えることもできるでしょうし、また「息をすること」とうような避けがたい行動が鍵として示されたなら、その未来は手堅く実現すると考えることができます。この考え方は占い師にとっては非常に便利であるといえましょう。

時間は未来から流れるという概念

 脳科学者の苫米地英人氏は、時間が過去から未来に向かって流れるという考え方は、創造主によって世界が作られたという西洋の時間観に過ぎないと断じています。現在は過去の積み重ねによって生まれたものではなく、すでに存在する未来からの影響を受けて決まるものであるというのです。過去は変えることができませんが、すでに存在しているけれどたどり着いていない未来には、直接の働きかけをすることができるのです。現在という時間は未来が少しずつ流れてきて実現するわけですから、その未来の有様を占いで理解して、そこに対しての働きかけを適切に行えば、ほしい未来を得ることができるというわけです。

 時間が人間の脳内だけにあるものですから、この考えは非常に適切であると思います。乱雑な未来から現在と過去が生まれたとしても、はっきりした矛盾はありませんし、空気からエネルギーを生み出すのも上等です。むしろ、空気からエネルギーが生まれないだろうという前提自体が科学教徒の考えそうなことです。筆者は時間が未来から流れているという考え方に、本能的な賛同を寄せています。

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